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ピーチMM1028便、重大インシデントの調査報告書は航空ファン必見

2016年12月22日に発生した、ピーチMM1028便(台北→羽田)の閉鎖中滑走路への着陸の試みた重大インシデントについてJTSBより調査報告書が発表されましたので紹介したいと思います。
タイトルの通り、非常に濃い内容で航空ファンとしては楽しめるといったらおかしいですが、非常に興味深い内容でした。当時の状況が頭の中で再現されるかと思います。最悪空中衝突の可能性があっただけに非常に深刻な状況だったことがわかります。

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<概要>
ピーチアビエーション株式会社所属エアバス式A320-214型JA811Pは、平成28年12月22日(木 、同社の定期1028便として、東京国際空港滑走路)16Lへの進入中の00時39分、閉鎖中であった滑走路23へ向けて誤って進入しようとした。これに気付いた航空管制官は、同空港から約9㎞東の地点で、同機に復行を指示した。同機は、その後レーダー誘導されて、視認進入により、00時55分に滑走路16Lに着陸した。
同機には、機長ほか乗務員5名及び乗客158名の計164名が搭乗していたが、負傷者はなく、機体に損傷はなかった。
<原因>
本重大インシデントは、東京国際空港滑走路16Lに着陸するため、VOR A進入中であった同機が、閉鎖中であった滑走路23に向けて誤って進入しようとしたため発生したものと考えられる。
同機が閉鎖中の滑走路23に誤って進入しようとしたことについては、機長及び副操縦士がVOR A進入の事前準備が不十分であったこと、及び機長及び副操縦士が着陸滑走路の変更指示をスレットとして認識できず、ワークロードマネージメント、適切なモニター及び助言を行えなかったことによるものと考えられる。
1.1 航空重大インシデントの概要
ピーチアビエーション株式会社所属エアバス式A320-214型JA811Pは、平成28年12月22日(木 、同社の定期1028便として、東京国際空港滑走路)16Lへの進入中の00時39分、閉鎖中であった滑走路23へ向けて誤って進入しようとした。これに気付いた航空管制官は、同空港から約9㎞東の地点で、同機に復行を指示した。同機は、その後レーダー誘導されて、視認進入により、00時55分に滑走路16Lに着陸した。
同機には、機長ほか乗務員5名及び乗客158名の計164名が搭乗していたが、負傷者はなく、機体に損傷はなかった。
1.2 航空重大インシデント調査の概要
本件は、航空法施行規則(昭和27年7月31日運輸省令第56号)第166条の4第2号中の「閉鎖中の滑走路への着陸の試み」に該当し、航空重大インシデントとして取り扱われることとなったものである。
1.2.1 調査組織
運輸安全委員会は、平成28年12月22日、本重大インシデントの調査を担当
する主管調査官ほか2名の航空事故調査官を指名した。
1.2.2 関係国の代表
本調査には、重大インシデント機の設計・製造国であるフランス共和国の代表及
び顧問が参加した。
1.2.3 調査の実施時期
平成28年12月22日及び23日
口述聴取及び機体調査
同年12月26日
レーダー航跡及び管制交信の確認
並びに口述聴取
平成29年 2 月 7 日、8日及び16日
口述聴取
1.2.4 原因関係者からの意見聴取
原因関係者から意見聴取を行った。
*1 「VOR A進入」については、2.8.3及び付図7参照。
*2 「FL」とは、標準大気の圧力高度で、高度計規正値を29.92inHgにセットしたときの高度計の指示(単位はft)を100で除した数値で表される高度である。日本では通常14,000ft以上の飛行高度はフライトレベルが使用される。例として、FL350は高度35,000ftを表す。
*3 「PF」及び「PM」とは、2名で操縦する航空機における役割分担からパイロットを識別する用語である
PFは、Pilot Flyingの略で、主に航空機の操縦操作を行う。PMは、Pilot Monitoringの略で、主に航空機の飛行状態のモニター、PFの操作のクロスチェック及び操縦以外の業務を行う。
*4 「ATIS情報」とは、空港等に発着する航空機を対象に提供される、当該飛行場の進入方式、使用滑走路空港等の状態、気象情報等に関する情報である。ATIS情報「B」については、2.6.2参照。
*5 「ターミナル管制所」とは、ターミナル・レーダー管制業務及び進入管制業務を行う機関をいう。
– 2 -1.2.5 関係国への意見照会
関係国に対し意見照会を行った。
2.1.2 関係者の口述
(1) 機長
本重大インシデント発生前日、機長は、乗務のため、16時30分に関西
国際空港にある同社へ出社した。この日、機長及び副操縦士は、関西国際空
港から台湾桃園国際空港及び台湾桃園国際空港から東京国際空港へ向かう二
つの飛行区間に乗務予定であった。
台湾桃園国際空港を出発して東京国際空港へ向け巡航中、機長は、ATIS情報及びNOTAMを確認した上でILS Y 滑走路34R進入のアプローチブリーフィングを完了し、降下を開始した。当初、東京アプローチからは、ILS Y進入による滑走路34R着陸予定であることを通報されたしかし、KAIHOの1~2分手前を飛行中に「VOR A進入による滑走路16L着陸へ変更予定である」と通報された。機長は、着陸滑走路の変更を全く予測しておらず、変更理由が分からなかったため驚いたが、同空港の気象状態は良好だったので問題ないだろうと思った。機長は、副操縦士にMCDU セットを依頼したが、副操縦士はかなり戸惑っている様子だった。
機長は、DARKSまでの経路 選択を確認し、FMGC のNAVデータベース (以下「データベース」という )にVOR A進入方式が未登録であることを認識した。機長は、同機を飛行させながら、VOR A進入のアプローチブリーフィングを実施し、VOR A進入のアプローチチャート及びVORが羽田VOR/DME(HME)を選局していることを確認したが騒音軽減優先飛行経路チャート を参照する時間がなかった。
機長は、DARKSを通過する時、同空港、市街地及び工場等の多数の灯火を認め、APをHDGモード(水平方向)及びVSモード(垂直方向)として、昇降率-1,000fpmで降下を開始したが、滑走路16Lを視認することはできていなかった。機長は、SAZAN を通過した時の高度及びMDA に係るオートコールアウト についての記憶はなかったが、MDAを維持しようとしたつもりだった。機長は、チェックリスト等のタスクに追われて非常に忙しい状況の中、滑走路16Lを見付けようとしたが視認できなかった。
このような状況下で、機長は、左前方に見えた明るく点灯している滑走路を見て本能的に左旋回し、副操縦士にHDG/TRKセレクターを滑走路16Lの磁方位(157°)へセット及びTRK/FPAとするよう指示した。この後、機長は、PFD にHDG(TRK)バグ が表示されておらず、磁針路が230°になっていることに気付いて、何かがおかしいと感じた。機長は、目の前の滑走路は滑走路16Lではなく、閉鎖中の滑走路23ではないか、閉鎖滑走路は真っ暗ではないのか、進入復行のため左旋回しなければならないのではないか等を考えていた。その時、東京タワーから直ちに右上昇旋回して復行するように指示された。機長は、公示された復行手順とは逆方向の指示だったので戸惑ったが、改めて具体的な方位と高度の指示があったため、これに従った。その後、レーダー誘導を受け、視認進入で滑走路16Lに着陸した。
機長は、乗務終了後にホテルで副操縦士と起こった事象を確認し、滑走路16Lへの周回進入に入るための旋回が遅れ、進入を中断しようと思っていた時に復行を指示された旨の社内安全報告書 を会社へ提出した。

機長は、同機と同じ型式であるエアバス式A320型(以下「同型機」という )で約10年間の乗務経験を有し、同空港滑走路16Lへの着陸も数多く経験していたが、VOR A進入に引き続く周回進入 は今回が初めてであった。機長は、本重大インシデントの発生を振り返り、管制機関に対して準備時間が足りないことを伝えた上で、待機又はレーダー誘導による視認進入を要求するべきだったと思った。
(2) 副操縦士
副操縦士は、これまで約20年間の航空機乗務経験があったが、同社に入社後、初めて旅客機の操縦を学び、本重大インシデント発生の約4か月前に同型機の副操縦士として乗務を開始した。副操縦士は、同型機でこれまで約400時間乗務していたが、同空港への進入は今回が2回目で、VOR A
進入に引き続く周回進入は初めてであった。
KAIHOの手前で、東京アプローチから着陸滑走路の変更を通報された。副操縦士は、MDAの入力及びDARKSアライバルの選択はできたが、データベースにVOR A進入方式を見付けられず、操作にかなりの時間が掛かった。また、着陸滑走路16Lを入力 し、NDに滑走路シンボルが表示されていることは確認した。機長から新たにVOR A進入のブリーフィングがあったが、時間がなかったこともあり、滑走路を視認して右旋回してダウンウインドへ入ること等は含まれていなかった。DARKS通過後、目の前に空港があることは認識し、滑走路16L進入用のALB が明るく点灯していたことも覚えているが、滑走路の判別はできなかった。進入中、外の様子とアプローチチャート及びNDの表示をクロスチェックしていたが、意識の大半がフラップ下げ等の手順の実施に向いており、飛行経路のモニ
ターが十分にできず、高度についてもあまり記憶がなかった。
副操縦士は、同機が左旋回していることに気付いて、外を見ると左前方に明るく光った滑走路があり、機長からの指示で滑走路16Lの磁方位をセットした。副操縦士は、滑走路16Lへの飛行手順として、まず右旋回を行い、そしてベースで左旋回して滑走路に正対する経路を想像しており、そのよう
な経路をたどらない状態で同機が滑走路16Lに正対したように感じ、違和感を持った。しかし、副操縦士はベテランである機長を信頼しており、自身のモニターが不十分であったため、気付かないうちに、同機は滑走路16Lが目前にある位置まで飛行したのだろうと思い、機長に対して確認しなかっ
た。副操縦士は、MDAに係るオートコールアウトはあったと思うが、確信はなかった。
ランディング・チェックリストが終わった時、東京タワーから「直ちに右旋回せよ」と言われたことを記憶しているが、なぜ、こんなところで右旋回かと思い、確認しようと思っていたところ、もう一度、東京タワーから右上昇旋回の管制指示があり、これに従った。
副操縦士は、同機から降機後すぐ、誤って滑走路23へ進入した旨を運航管理者 と乗員部長に報告(以下「1回目の報告」という )した。副操縦士は、ホテル到着後に機長と話し合い 「機長は滑走16Lを見付けられなかったため復行しようと思っていたこと、そして、ちょうどその時に東京タワーから復行を指示されたこと」を聞いて、自分の1回目の報告に誤りがあったと思い、改めてこの内容を修正報告(以下「2回目の報告」というした。
(3) 東京ターミナル管制所の管制官
東京アプローチが管制席に着いた00時ごろは、出発機は滑走路16L、到着機は滑走路34Rを使用していた。
東京アプローチは、同機との最初の交信でILS Y進入による滑走路34R着陸の予定を通報したが、東京飛行場管制所からの調整により、出発機が増えてくるのに備えて円滑な交通流を確保するため、到着機を滑走路16Lで着陸させる運用への変更を行うこととなった。東京アプローチは、レーダー画面を確認してどの到着機から着陸滑走路を変更するかを思案し、10,000ft付近を飛行していた同機に、着陸滑走路を変更し、VOR A進入による滑走路16L着陸となる予定を通報した。同機の操縦士からは即座に復唱があったことから、滑走路変更に関して問題ないと判断し、東京アプローチは、同機に対してVOR A進入の許可を発出した。
東京アプローチは、同機の後続到着機に対してもVOR A進入を指示したが、会社の規定によりVOR A進入はできない又はVOR A進入も視認進入もできないと通報した航空機があった。このため、これらの航空機にはそれぞれ視認進入による滑走路16Lへの着陸又は待機後のILS Y進入による滑走路34Rへの着陸を指示した。
東京ターミナル管制所では、始業前ブリーフィングの段階で、D滑走路定期保守のためC滑走路 のみの運用となるが、交通量が増えてくれば、到着機はVOR A進入になるだろうと予想していた。
東京ターミナル管制所の管制官は、通常運用における使用滑走路の変更を通報する際に理由の説明をすることはなく、今回も変更理由は通報していなかった。また、到着機に滑走路の変更指示を発出する時期についての明確な基準はないが、なるべく早い方が良いということは承知しており、同機から
ILS進入の要求があれば応じようと思っていた。
(4) 東京飛行場管制所の管制官
東京タワーが管制席に着いた23時ごろは北風運用 であった。東京ターミナル管制所との調整により、D滑走路閉鎖後に出発機が増えた段階で効率的に処理するため、南風運用 として、同機以降の到着機をVOR A進入とすることとなった。
DARKSに向けて飛行中の同機から呼び込みがあり、東京タワーは、滑走路16Lへの進入継続を指示し、同機の着陸前に出発機2機を離陸させる予定だった。1番機に離陸許可を発出してから2番機に滑走路で待機するよう指示した後、同機に対し、出発機が1機あることを伝えて進入継続を指示
した。その後、同機の高度はやや低いように見え、右旋回して滑走路16Lのダウンウインドに入るような動きがなく、左旋回しているように見えて様子がおかしいと思った。その後も同機は、左旋回して滑走路23に向かっているように見え、滑走路16Lからの出発機との間隔を設定するため、直ち
に右上昇旋回して復行するよう指示した。操縦士からすぐに復唱はあったが、右旋回する様子がなかったため、330°へ右旋回し、上昇して3,000ftを維持するよう、具体的な指示を出した。
東京タワーは、過去に深夜のVOR A進入で到着機がうまく進入できずに復行した事例を見たことがあり、到着機の動きを注視していた。また、閉鎖されていたD滑走路の飛行場灯火の操作権を航空灯火・電気技術官 (以下「灯電官」という )に委譲していたため、各灯火の点灯状態については関知していないが、工事車両も多数おり、同滑走路は通常運用時よりも明るく見えた。閃光灯、進入灯等の灯火点灯に関しては、閉鎖滑走路への誤進入防止策として関係者間の申合せ に沿って運用しており、消灯していた。
東京タワーは、本重大インシデントを振り返り「右にブレイクするとき通報してください(REPORT RIGHT BREAK 」や「ダウンウインドに入ったら報告してください(REPORT DOWNWIND)」等の指示をすれば操縦士にもリマインドにもなり、より良かったかもしれないと思った。
東京飛行場管制所では、VOR A進入方式は航空機側の自由度が大きいため管制官側が航空機をコントロールしづらく、出発機を離陸させるタイミングも取りづらい進入方式であり、VOR A進入の注意点として、到着機を注意深く監視し、動きがおかしいと判断すればすぐに指示をすること等の対処は周知されており、特に外国航空会社の航空機には注意するように教えられていた。
本重大インシデントにおいて、東京タワーが同機に右旋回を指示した場所は同空港からほぼ東北東へ約9㎞(北緯35度34分25秒、東経139度53分14秒)の地点で、発生日時は平成28年12月22日00時39分29秒であった。
2.2 人の負傷
負傷者はいなかった。
2.3 航空機の損壊に関する情報
同機に損傷はなかった。
2.4 航空機乗組員に関する情報
(1) 機長
男性 62歳
定期運送用操縦士技能証明書(飛行機)平成18年 3 月 8 日限定事項 エアバス式A320型
平成18年 3 月 8 日
第1種航空身体検査証明書
有効期限
平成29年 9 月16日
総飛行時間
24,104時間45分
最近30日間の飛行時間
54時間00分
同型式機による飛行時間
8,940時間35分

最近30日間の飛行時間
54時間00分
(2) 副操縦士
男性 45歳
事業用操縦士技能証明書(飛行機)
平成 9 年10月 2 日
限定事項 エアバス式A320型
平成28年 4 月22日
計器飛行証明
平成27年 9 月11日
第1種航空身体検査証明書
有効期限
平成29年 7 月 8 日
総飛行時間
3,530時間37分
最近30日間の飛行時間
76時間07分
同型式機による飛行時間
405時間01分
最近30日間の飛行時間
76時間07分
3 分析
3.1 運航乗務員の資格等
機長及び副操縦士は、適法な航空従事者技能証明及び有効な航空身体検査証明を有していた。
3.2 航空機の耐空証明書等
同機は、有効な耐空証明を有しており、所定の整備及び点検が行われていた。
3.3 気象との関連
気象は、本重大インシデント発生に関連はなかったものと推定される。

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3.4 飛行の経過
3.4.1 着陸滑走路の変更指示を受けた時の状況
2.1.2(1)に記述したとおり、機長は、巡航中にILS Y 滑走路34R進入のアプローチブリーフィングを実施し、D滑走路の閉鎖を確認したものと考えられる。
2.1.1に記述したとおり、東京アプローチは、同機に対してILS Y進入による滑走路34Rへの着陸予定である旨を通報(00時24分01秒)したが、その後、VOR A進入による滑走路16L着陸への変更を予定している旨を通報(同26分26秒)した。2.1.2(1)に記述したとおり、機長は、着陸滑走路の変更を全く予測しておらず、同機の高度は約10,600ft、位置はUTIBO付近であったため、このように同空港に接近した状況での着陸滑走路の変更指示に驚いたが、機長自身は滑走路16Lへの着陸経験もあったこと及び当時の気象状況から、管制指示を受け入れたものと考えられる。
一方で、データベースにはVOR A進入方式が未登録であったため、機長及び副操縦士は、FMGCの設定がない状態で進入することとなったと考えられる。副操縦士の口述から、同機がDARKSを通過する際のMCDU及びNDの表示は図8に示すイメージであった可能性が考えられる。
3.4.2 アプローチブリーフィングの状況
付図1に示したとおり、同機が東京アプローチからVOR A進入への変更予定を通報されてからKAIHOに到達するまでは約5分間であった。副操縦士は、この通報を受けた後、機長からの指示でMCDUの操作に着手したが、戸惑い、VOR A進入方式がデータベースに登録されていないことを認識するのにかなりの時間を費やしたものと考えられる。2.1.2(1)に記述したとおり、機長は、ILS Y
進入からVOR A進入へ変更となったことから、改めてアプローチブリーフィングを実施しようとしたが、十分な準備時間が取れず、結果的に、ブリーフィングを実施できたのはDARKSへ向かう途中であったものと考えられる。
KAIHOからDARKSまでは降下しながらフラップを下げて減速するフェーズで、機長のワークロードは高い状態であり、アプローチブリーフィングは慌ただしく行われたものと考えられる。このため、機長は、VOR Aアプローチチャートの確認はしたものの、2.8.4に記述した騒音軽減優先飛行経路のチャートを確認できなかったものと考えられる。結果として、機長は、VOR A進入中の滑走路
16Lの見え方のイメージ及び右旋回で周回進入経路に入るイメージがない状態で進入を開始したものと考えられる。
3.4.3 進入開始時の状況
2.1.2(1)に記述したとおり、機長はMCDUでHMEのセットを確認したことを述べており、VOR A進入方式はデータベースに未登録のため、FMGCの設定がない状態ではあったが、機長はND上のVORの針及びDMEを参照してVORA進入を開始したものと考えられる。
付図5に示したとおり、同機はHDGモードとし〔A〕 、VSモード〔B〕で降下を開始しており、AP/FDがオフとなるまで同モードが継続している。さらに、付図3に示したように、同機は、SAZANの下限高度(1,100ft)を逸脱して降下している。これは、機長及び副操縦士がFMGCの設定がない状態でアプローチチャートを参照して進入する手順に慣れておらず、プロファイルの確認が不十分となったことによるものと考えられ、機長が定期訓練時の周回進入の手順に準じて、着陸滑走路16Lを見付けるため早くMDA(最低降下高度)に到達しようとしたことが関与した可能性が考えられる。

3.4.4 MDAに至る前後の状況
付図5に示したとおり、同機はMDA(760ft)に到達した時に〔C 、昇降率(Selected V/S)が0fpmに変更されており〔D 、機長はMDAを維持しようとしたと考えられるが、同機はMDA未満に降下し、同機のAP/FDが解除された後も緩やかに降下している。
機長は、目前にあるはずの着陸滑走路16Lを見付けられないことに戸惑い、その発見に集中してしまったため、滑走路を視認していない状態でMDA未満に降下したものと考えられる。
また、2.1.2(2)に記述したとおり、副操縦士は、同空港に慣れておらず、DARKS通過後はアプローチチャートの参照及びフラップ操作等の機長からの指示への対応に追われていたこともあり、PMとして、自機の高度及び飛行経路のモニター、機長の操縦のクロスチェック等ができない状態となり、滑走路位置の確認及び同機がMDA未満に降下したことについての機長へのアドバイスが行えなかったものと考えられる。
3.4.5 復行までの状況
2.1.2(1)に記述したとおり、機長は左前方に見えた明るく点灯している閉鎖滑走路23を見て本能的にその方向へ旋回したとしており、付図5の〔E 〔F〕に示したとおり、同機のAPが解除されて手動による操縦に切り替えられた後、同機は左旋回して高度を下げている。この時、同機は、誤って滑走路23に進入しようとしたものと考えられる。
この後、機長は、副操縦士に滑走路トラック157°のセット〔G〕及びTRK/FPAのセット〔H〕を指示したが 「HDG(TRK)バグ」及び「トラック・インデックス」がPFDに表示されていないこと、現在の磁方位が230°の方を向いていることに気付いて違和感を抱き、目前の滑走路は着陸滑走路16Lではなく、閉鎖中の滑走路23ではないかと思ったものと考えられる。
その一方で、東京タワーは、2.1.2(4)に記述したとおり、滑走路16Lのダウンウインドへ向かっているはずの同機が滑走路23へ向かって高度を下げているように見えたことから、復行を指示したものと考えられる。この時の東京タワーは、滑走路16Lからの出発機と同機との管制間隔を維持する必要があったことから、同機に対して直ちに右上昇旋回するよう復行指示をしたものと考えられる。

3.5 事前準備
機長及び副操縦士は、2.12.2に記述した同空港の空港資料を自習しており、機長に関しては、2.11に記述したオペレーションマニュアルの乗務要件である同空港の空港資格を付与されていたが、同空港の滑走路運用について、D滑走路が閉鎖で南風運用となった場合にはVOR A進入が実施されることを想定していなかったものと考えられる。
2.12.1に記述したとおり、FCOMでは、データベースに未登録である進入を実施する場合には、TRK/FPAガイダンスの使用が推奨されており、VOR A進入を実施する場合、パイロットはHMEへ向けて方位274°で飛行してTRKモードとした上で、プロファイルに沿って降下するものと考えられる。同社では、このようなデータベースに未登録である非精密進入を実施する場合の訓練を実施していなかった。
また、機長及び副操縦士は、VOR A進入の飛行手順についての具体的な知識(イメージ)を習得していなかったものと考えられ、本進入についての事前準備が不十分であったものと考えられる。
運航乗務員は、飛行する空港の進入方式が急に変更となった場合でも余裕を持って対応できるよう、飛行を計画する空港の可能性のある全ての進入方式について、あらかじめ飛行のイメージを準備しておく必要があると考えられる。
3.6 TEMの状況と同社のCRM/TEM教育・訓練
3.6.1 機長及び副操縦士のTEMの状況
(1) 機長のTEMの状況
2.10.1に記述したとおり、TEM(スレットアンドエラーマネージメント)を実践するに当たって、運航乗務員は、安全運航を脅かすおそれのある事象をスレットとして認識する必要があるが、本重大インシデント発生時、機長は、着陸滑走路の変更指示をスレットとして認識できていなかったと考えら
れる。
また、3.4.2に記述したとおり、副操縦士は、VOR A進入設定のためのMCDUの操作に戸惑い、かなりの時間を費やしたものと考えられる。機長は、副操縦士が戸惑っていることを認識したが、適切に時間管理せず、ワークロードマネージメントが行えなかったものと考えられる。さらに、機長は、自分自身がVOR A進入の具体的な飛行手順のイメージを確立していない状態であったため、十分なブリーフィングを実施することなく進入を開始したものと考えられる。2.10.2(1)に記述したとおり、FAAワーキンググループ報告書では、高いワークロード及びタイム・プレッシャーはインシデントの要因であるとした上で、パイロットは、状況を分析して評価するために自身の知識や技量を活用し、タスクの優先順位付け(時間管理)をしなければならないことを指摘している。機長は、限られた時間の中で、ワークロードマネージメント(タスクの優先順位付け)を適切に行い、十分なブリーフィングをした上で進入を開始する必要があったものと考えられる。また、時間に余裕がないと判断した場合には、進入方式変更の要求、待機の要求又はレーダー誘導の要求等の複数の選択肢があることを考慮する必要が
あったものと考えられる。
(2) 副操縦士のTEMの状況
機長と同様に、本重大インシデント発生時、副操縦士は、着陸滑走路の変更指示をスレットとして認識できなかったと考えられる。
2.1.2(2)に記述したとおり、副操縦士は、DARKS通過後に滑走路16L進入用のALBが見えたこと、及び機長が左旋回して滑走路に正対しようとした時、自身がイメージしていた着陸滑走路16Lへの進入経路との違いに違和感を持ったとしているが、豊富な飛行経験を有している機長への過度の信頼及び無用の遠慮があったことから、適切で積極的な助言をしなかったものと考えられる。2.10.2(3)に記述したとおり、CRM HDBKには、有効なコミュニケーションのためには、懸念や提言は積極的にはっきりと表明すること、他人の行動に対して疑問を持ち、必要に応じて説明を求めることの重要性等が記載されている。副操縦士は、自分が気が付いたこと、疑問に思ったことをちゅうちょなく積極的に助言する必要があったものと考えられる。
また、2.11に記述したとおり、同社のFCOM Pでは、PMの業務を「飛行状態及びPFの操作をモニターし、必要なコールアウト及びアドバイスを行う」と規定しており、2.10.2(2)に記述したとおり、FAAの「モニター業務に関する通達」では、有効なモニターは、事故を防ぐ最後の砦であ
り、防衛線であるとしている。3.4.4に記述したとおり、副操縦士は、アプローチチャートの参照及びフラップ操作等の機長からの指示への対応に追われ、PMとして、自機の高度及び飛行経路のモニター、機長の操縦のクロスチェック等ができない状態となったものと考えられる。
3.6.2 同社におけるCRM/TEM教育・訓練
2.12.3に記述したとおり、同社では、運航乗務員要員に対してCRM(導入)訓練を実施し、中型ジェット機の経験のない副操縦士要員に対してはPTRTを実施していた。また、同社は、LOFT訓練及び座学訓練を定期的に実施しており、座学のCRMレビューでは年度ごとにCRMスキルのテーマを設けて教育する等、CRM/TEM教育・訓練に取り組んできたものと考えられる。しかし、本重大インシデント発生時、機長及び副操縦士は、適切にTEMを実践することができなかったものと考えられる。
これは、これまでの同社における運航乗務員に対するCRM/TEMの教育・訓練において、機長及び副操縦士にCRM/TEMのスキルが十分に定着するに至っていなかったことによる可能性が考えられる。
同社は、日常運航において、運航乗務員が運航を複雑にしてエラーを誘発する可能性のある事象に遭遇した場合、それらをスレットとして認識し、適切にCRMスキルを発揮してTEMを実践できるよう、その定着度の向上に向けて同社のCRM教育・訓練を見直していく必要があると考えられる。また、2.10.3に記述したとおり、同社の経験したイベントを網羅的に検証し、それらをCRM/TEM教育・訓
練の内容に反映させていくことも有効であると考えられる。
3.7 SOPの遵守
同空港への進入中、機長は、空港全体は視認できていたが滑走路16Lの見え方のイメージできていなかったため、着陸滑走路16Lを見付けられず、当該滑走路を視認できていない状態で、結果的にMDA未満に降下したものと考えられる。本重大インシデント発生時、機長は、2.11に記述した非精密進入時のスキャンポリシーに従って、PMから「_in sight」のコール・アウトがあり、着陸滑走路を視認するまではMDAを維持する必要があり、また、副操縦士は、この機長のエラーを指摘する必要があった。
2.12.1に記述したとおり、FCOMには安全な運航を実施するための標準手順(SOP)が定められている。本重大インシデントにおいて、機長は、SOPに従って、MDAを維持した上で進入を継続し、機長及び副操縦士が滑走路16Lを確実に視認できない状況においては復行する必要があったものと考えられる。
3.8 同社のリスク情報の収集・活用と知識習得状況の確認
2.12.2に記述したとおり、同社では、本重大インシデント発生前にも同社機が同空港のVOR A進入を経験していることを認識していたとしており、これまでは、その時々の同社の運航乗務員の適切な対応により、VOR A進入を実施してきたものと考えられる。このため、同社は、同社の運航乗務員がデータベースに未登録の進入方式を実施する際のリスクを考慮することはなかったものと考えられ、同空港のVOR A進入がデータベースに未登録である旨の情報を空港資料に加える等の措置は講じていなかった。また、同社は、運航乗務員に対して空港資料による自習を課していたが、その内容についての知識習得状況について管理しておらず、進入の様子を記録した補助動画資料を作成していたが、その視聴については、運航乗務員の任意としていた。
これらのことから、本重大インシデント発生時、機長及び副操縦士がVOR A進入を適切に実施することができなかったことについては、同社のリスク情報の収集・活用と運航乗務員による知識習得状況の確認が不十分であったことが背景にあった可能性が考えられる。
3.9 管制機関とパイロットのコミュニケーション
2.1.2(1)に記述したとおり、機長は、気象情報にほとんど変化がなかったため、同空港の進入方式/着陸滑走路が変更される可能性を予想していなかったと考えられる
また、2.8.7に記述したとおり、VOR A進入への変更を通報された同機の後続のA機の操縦士はILS進入を要求し、B機の操縦士は当惑し、C機及びD機の操縦士はVOR A進入は実施不可能である旨を通報しており、機長同様、後続の航空機のパイロットも、同空港の進入方式/着陸滑走路の変更は想定していなかった可能性が考えられる。
しかし、2.1.2(3)及び(4)に記述した管制官の口述にもあるとおり、管制機関は、気象状況のほかに2.8.4に記述した騒音軽減運航方式や離着陸機の効率的な処理を考慮して使用滑走路を決定している。このような諸条件を踏まえ、パイロットは、滑走路変更等の事態は常に生じる可能性があるものと想定しておくべきであり、準備時間の確保のための待機を要求する等の臨機の対応をとらなければならないと考えられる。
一方で、管制機関は、降下中の着陸滑走路の変更指示はパイロットにとってスレットとなり得ることを再認識し、また、本重大インシデント発生時のように、気象の変化以外の理由による着陸滑走路の変更指示を発出する場合には、パイロットのワークロードが高まる可能性を考慮し、実施可能な範囲で早い段階において情報提供することが望まれる。
3.10 イレギュラー運航に対する同社の対応
兼任MODは、1回目の報告の後に同空港の滑走路23は閉鎖中であることは確認しており、本事象が閉鎖滑走路への着陸の試みの重大インシデントに該当することを認識する必要があったものと考えられる。
2.13.3(1)に記述したとおり、同社においてMODは、機体の運航継続の判断を行う責任があるとしており、2.13.1に記述したとおり、MODは、事象が発生した場合、その事象が航空事故や航空重大インシデントに該当するか否か等を独断で判断・完結せず、各部署と情報共有して協議することが必要であるとも規定されている。兼任MODは、本事象が重大インシデントに該当する可能性を懸念したものの、知識の整理が不十分であったことから確信が得られず、深夜の電話連絡をためらって誰にも相談せず、他の便の出発準備業務に追われていたこともあり、同機に対する対応を指示せず、結果として、同機の継続運航を容認し、CVR等の機器の保全措置をとらなかったものと考えられる。
同社は、深夜時間帯にイレギュラー運航が発生した場合でも、MODが中心となって各部署と綿密に情報共有した上で機体の継続運航等について迅速に協議できる体制を整え、この体制が適切に機能運用されているかを継続的に評価し、必要に応じて改善していく必要があるものと考えられる。また、同社は、MODへの資格付与要件及び教育について、見直す必要があると考えられる。
3.11 閉鎖滑走路への標識の設置等について
本重大インシデント発生時、D滑走路は閉鎖されていたが、定期点検のため同滑走路の灯火は点灯していた。2.1.2(1)に記述したとおり、機長は、D滑走路が閉鎖中であることは認識し、閉鎖滑走路は真っ暗なのではと思ったと述べており、NOTAMで滑走路23が閉鎖中である認識はあったものと考えられるが、目前にある明るく点灯した滑走路23に向かって飛行した。空港管理者は、類似のヒューマンエラーを未然に防ぐための一つの施策として、2.14に記述した一時的に閉鎖中の滑走路に閉鎖を示す標識を置くこと等について検討することが望ましい。
4 結論
4.1 分析の要約
(1) 機長及び副操縦士は、適法な航空従事者技能証明及び有効な航空身体検査証
*66
明を有していた (3.1)
(2) 同機は、有効な耐空証明を有しており、所定の整備及び点検が行われていた。
(3.2)

(3) 気象は、本重大インシデント発生に関与していなかったものと推定される。
(3.3)
(4) 東京アプローチは、同機に対してVOR A進入による滑走路16L着陸への変更を予定している旨を通報した。機長は、着陸滑走路の変更を全く予測しておらず驚いたが管制指示を受け入れた。しかし、データベースにはVORA進入が未登録であり、機長及び副操縦士は、FMGCの設定がない状態で進入することとなったと考えられる (3.4.1)
(5) 副操縦士はMCDUの操作にかなりの時間を費やし、機長は十分な準備時間が取れず、アプローチブリーフィングは慌ただしく行われたものと考えられる。
結果として、機長は、VOR A進入中の滑走路16Lの見え方のイメージ及び右旋回で周回進入経路に入るイメージがない状態で進入を開始したものと考えられる (3.4.2)
(6) 同機がSAZANの下限高度を逸脱して降下していることについては、機長及び副操縦士が通常とは違う手順に慣れておらず、本進入プロファイルの確認が不十分となったことによるものと考えられ、機長が着陸滑走路16Lを見付けるため、早くMDAに到達しようとしたことが関与した可能性が考えられる。(3.4.3)
(7) 機長は、目前にあるはずの着陸滑走路16Lを見付けられないことに戸惑い、その発見に集中してしまったため、滑走路を視認していない状態でMDA未満に降下したものと考えられる。また、副操縦士は、PMとして、自機の高度及び飛行経路のモニター、機長の操縦のクロスチェック等ができない状態となり、滑走路位置の確認及び同機がMDA未満に降下したことについての機長へのアドバイスが行えなかったものと考えられる (3.4.4)
(8) 機長は左前方に見えた明るく点灯している閉鎖滑走路23を見て本能的にその方向へ旋回したとしており、この時、同機は誤って滑走路23に進入しようとしたものと考えられる。一方で、東京タワーは、滑走路16Lのダウンウインドに向かっているはずの同機が滑走路23へ向かって高度を下げているように見えたことから、同機に対し、直ちに右上昇旋回の復行指示をしたものと
考えられる
(9) 機長及び副操縦士は、D滑走路が閉鎖で南風運用となった場合のVOR A進入の実施を想定していなかったものと考えられる。また、VOR A進入の飛行手順についての具体的な知識(イメージ)を習得しておらず、事前準備が不十分であったものと考えられる (3.5)
(10) TEMを実践するに当たって、運航乗務員は、安全運航を脅かすおそれのある事象をスレットとして認識する必要があるが、本重大インシデント発生時、機長及び副操縦士は、着陸滑走路の変更指示をスレットとして認識できていなかったと考えられる。機長は、適切に時間管理せず、ワークロードマネージメントが行えなかったものと考えられる。さらに、機長は、自分自身がVORA進入の具体的な飛行手順のイメージを確立していない状態であったため、十分なブリーフィングを実施することなく進入を開始したものと考えられる。
また、副操縦士は、自身がイメージしていた着陸滑走路16Lへの進入経路との違いに違和感を持ったとしているが、機長への過度の信頼及び無用の遠慮があったことから、適切で積極的な助言をしなかったものと考えられる。また、副操縦士は、PMとして、自機の高度及び飛行経路のモニター、機長の操縦のクロスチェック等ができない状態となったものと考えられる (3.6.1)
(11) 機長及び副操縦士が適切にTEMを実践することができなかったことについては、同社の運航乗務員に対するCRM/TEM教育・訓練において、機長及び副操縦士にCRM/TEMのスキルが十分に定着するに至っていなかったことによる可能性が考えられる (3.6.2)
(12) 同空港への進入中、機長は、着陸滑走路16Lを視認できていない状態でMDA未満に降下したものと考えられる。機長は、SOPに従ってMDAを維持した上で進入を継続し、機長及び副操縦士が滑走路16Lを確実に視認できない状況においては復行する必要があったものと考えられる (3.7)
(13) 同社は、データベースに未登録の進入方式を実施する際のリスクを考慮することはなかったと考えられ、同進入がデータベースに未登録である旨の情報を空港資料に加える等の措置は講じていなかった。また、同社は、運航乗務員の空港資料による自習内容についての知識習得状況について管理していなかった。本重大インシデント発生時、機長及び副操縦士がVOR A進入を適切に実施することができなかったことについては、同社のリスク情報の収集・活用と運航乗務員による知識習得状況の確認が不十分であったことが背景にあった可能
性が考えられる (3.8)
(14) パイロットは、滑走路変更等の事態は常に生じる可能性があるものとして想定しておくべきであり、準備時間の確保のための待機を要求する等の臨機の対応をとらなければならないと考えられる。
一方で、管制機関は、着陸滑走路の変更指示はパイロットにとってスレットとなり得ることを再認識し、実施可能な範囲で早い段階において情報提供する
ことが望まれる (3.9)
(15) 兼任MODは、本事象が重大インシデントに該当する可能性を懸念したものの、結果として同機の継続運航を容認したものと考えられる。同社は、深夜時間帯にイレギュラー運航が発生した場合でも、機体の継続運航等について迅速に協議できる体制を整え、その体制を継続的に評価し、必要に応じて改善していく必要が、また、MODへの資格付与要件及び教育について、見直す必要が
あると考えられる (3.10)
(16) 機長は、NOTAMで滑走路23は閉鎖中との認識はあったと考えられるが、目前にある明るく点灯した滑走路23に向かって飛行した。空港管理者は、類似のヒューマン・エラーを未然に防ぐための一つの施策として、一時的に閉鎖中の滑走路に閉鎖を示す標識を置くこと等について検討することが望ましい。(3.11)
4.2 原因
本重大インシデントは、東京国際空港滑走路16Lに着陸するため、VOR A進入中であった同機が、閉鎖中であった滑走路23に向けて誤って進入しようとしたため発生したものと考えられる。同機が閉鎖中の滑走路23に誤って進入しようとしたことについては、機長及び副操縦士がVOR A進入の事前準備が不十分であったこと、及び機長及び副操縦士が着陸滑走路の変更指示をスレットとして認識できず、ワークロードマネージメント、適切なモニター及び助言を行えなかったことによるものと考えられる。

 引用: JTSB
16LアプローチはD滑走路完成で基本的にはもう行われていないかと思っていましたがまだやっていたんですね。それにしても完全なヒューマンエラーですので今後もLCCだからとかではなく、全航空会社安全最優先で運航してもらいたいです。日本でもまだまだ上下関係で仕事がしにくい場面が多いのかもしれませんが、旅客運送にかかわる会社は表立って良い環境を整えてもらいたいです。今後は都心上空ルートとなるので期待していますが、正直不安も感じてしまいます。

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