航空ニュース

アンカレッジ空港、ウクライナ危機で複数の航空会社から問い合わせ ロシアの報復で今後日本~欧州路線が冷戦時代に逆戻りも

 アメリカのアラスカ州に位置するアンカレッジ空港は、ウクライナ危機により複数の航空会社から問い合わせを受けていることを明らかにしたとロイター通信が報じました。

 これは、ロシアのウクライナ侵攻に対する制裁の一環として、欧州各国政府が、ロシア国籍の航空機に対して自国の領空を飛行することを禁止する措置とし、ロシア政府がその報復として、同様の措置を講じる動きによるものです。

 現在のところロシア当局は、イギリスに対してこの措置を講じており、今後イギリス同様の制裁を行う予定のポーランド・チェコもこの報復を受けると考えられます。また、今後この制裁については、各国政府が追従していく見込みであることから、今後多くのエアラインがロシア領空を飛行できなくなる恐れがあります。

 通常ヨーロッパからアジア(特に極東)へ飛行するルートは、ロシア上空を通過することから、影響を受けるのは日本路線ということになり、この代替ルートとして冷戦時代に使用していたルートのアンカレッジ経由を選択肢の一つとして検討している模様です。

 なおこれまでに日本政府は、この制裁をロシアに課すことなどについて一切触れていませんが、仮に日本がロシア航空機の乗り入れを禁止した場合、同様の報復を受ける可能性が極めて高く、この影響は日本への物流網などにも影響を与えるほか、長年の交渉でロシア側に緩和させたロシア上空通過権を危うくさせる可能性があり、日本側の方が不利益を被ることから、日本政府はこの制裁に関しては触れないと考えられます。

 ここ数年では、LOTポーランド航空が成田線の運航においてロシアの上空通過権の獲得に苦労したことが記憶に新しいですが、日本側がこの制裁を受けた場合、今後いつロシア上空を飛行できる日がくるのかも先行きが不透明となり、この問題においてはここが厄介なポイントとなります。

 しかしながら欧州各国にとってみれば、極東路線は僅かであり、全体の路線ネットワークからするとそこまで影響が及ばないことから、この制裁を行う政府が増える可能性が高く、今後危惧されるのはこの禁止措置により、日本~欧州間の運航便に大きな制約がかかり、外航による路線の運休や撤退などが続出する事となります。

 ただ、この領空通過権においては、ロシアにとっても貴重な収入源であることは確かで、2008年には約4億2000万ドル(約500億円)を獲得したことがわかっており、現在はコロナ禍でこの額は減少しているものの、正常であれば航空便数が当時よりも増えていることから、コロナ前までは収入も増えているものとみられ、今後ロシアがこの収入の価値をどのように判断するかが注目となります。

 今回の戦争は、現時点では日本への影響は限定的ですが、場合によっては日本の航空業界に大きな影響を及ぼす可能性があり、今後の動向には注目です。Photo :Anchorage Airport

ロシア政府、イギリスに報復措置 英国籍のロシアへの乗り入れと領空の飛行を禁止 日本路線は迂回へ

ポーランド政府、イギリスに続きロシア国籍の航空機のポーランド領空の飛行及び乗り入れを禁止へ

新LCCのノーザンパシフィック航空、東京/成田線はデイリー運航とし大阪/関西・名古屋/中部線は週数便の運航を計画