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オランダ政府による環境保護を名目としたスキポール空港の発着枠縮小の決定を受けKLM・デルタ航空など各社が提訴 関西線は削減候補として有力

 オランダ政府が、欧州第3位の利用者数を誇るスキポール空港の年間発着枠を現状の50万回から44万回に縮小させる決定をしたことを受け、同空港に乗り入れる主要エアラインは、オランダ政府を提訴することを明らかにしました。

 この問題は、オランダ政府が、騒音や環境などを考慮した気候政策案『グリーンキャップ』としてスキポール空港の発着枠を年間44万回に制限する方向で調整を進めているものとなり、これまでKLMオランダ航空は、次世代航空機やSAFの導入などにより発着枠の削減を行わずして、騒音やCO2の排出量の問題は解決できるとして、この政策を撤回するよう求めていました。

 しかしながら今回オランダ政府は、KLM側の主張を退け気候政策案『グリーンキャップ』を進める決定を行ったことから、KLMオランダ航空グループ、コレンドン、デルタ航空、イージージェット、TUIは協力し、同政府を提訴すると発表しています。

 また国際航空運送協会(IATA)も訴訟に参加することを発表し、EU域内での空港に適用される騒音関連の運用制限に関するEU規則598/2014に違反していると主張し、同政府に意義を唱えています。
*EU規則598/2014:影響を受ける当事者との協議、スロット削減を最後の手段としてのみ用いること、地域住民、環境、地域経済の利益と航空の経済的・社会的利益のバランスをとること

 このほかにも先月アメリカのジェットブルーの申請した運航便が認められなかったことから、同社はオープンスカイ協定に違反するとし、アメリカ運輸省に協定違反として調査を行うよう申し入れるなど、同空港をめぐっては混乱が続いています。

 なお同空港の発着便の60%を占めるKLMオランダ航空は、仮にこの政策が恒久的に実施された場合の削減便の選定に着手しており、正式発表はありませんが、アジア長距離線においては関西、台北、厦門、杭州が削減候補となっている模様です。

 なお今回の提訴をするにあたり、KLMオランダ航空Marjan Rintel CEO、IATA Willie Walsh会長は以下の声明を発表しています。

私たちは、騒音レベルやCO2排出量の削減のために設定された目標を受け入れ、世界170都市に就航するネットワークを維持しながら、最終的にこれらの目標を実現できるよう機材更新やSAF調達に数十億ドルを投資しています。残念ながら政府は私たちの呼びかけに耳を貸さないため、私たちは法的措置をとらざるを得ない状況にあります。Marjan Rintel CEO

オランダ政府は、ネットワークを破壊することにより、自国の経済に不利益を与えています。そして、EUの法律と国際的な義務に反してそれを行っているのです。オランダ政府が選択した雇用を奪う航空業界への敵対的アプローチは、騒音対策としてはまったく不釣り合いなものです。この違法なアプローチが生み出す危険な前例は、法廷で争う以外に選択肢はありません。IATA Willie Walsh会長

 この流れは今後他国へ波及する可能性も指摘されており、既にこのような動きを見越し航空機メーカーも次世代機の開発に取り組んでいる状況となり、昨年ボーイングが今後の新機種は完全に新しい技術を採用した航空機を開発するとして、新機種は10年以上先になる見込みであることを明らかにしたことと関係している可能性もあります。

 またこの流れが欧州各国に広がった場合、航空産業は衰退することが決定的となることから、航空業界は是が非でも、このオランダ政府の決定を撤回したいものと考えられています。Photo : Schipol Airport

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