エールフランスKLMグループ傘下のKLMオランダ航空において、マルヤン・リンテルCEOに対する高額な報酬パッケージがオランダ国内で激しい議論を呼んでいます。
事の発端は、リンテルCEOの直近の報酬案です。基本給自体は約60万ユーロ(約9,900万円)と前年から据え置かれたものの、業績連動型の短期ボーナスや株式報酬が大幅に加算されました。その結果、ボーナス部分だけで約100万ユーロ(約1億6,500万円)に上り、総報酬額は約160万ユーロ(約2億6,400万円)と、前年から約32%の急激な引き上げとなる見通しです。
この決定に対し、会社側である同グループの取締役会は、正当かつ必要な措置であると主張しています。会社側の説明によれば、基本給は引き上げておらず、今回の増額は株主総会で事前に承認されている報酬ポリシーに従い、設定された業績目標を達成したために支払われる契約通りの報酬に過ぎず、巨大な国際航空グループを率いるトップの報酬としては、ライバルとなる他の欧米メガキャリアと比較して決して高すぎる水準ではなく、激しい国際競争を勝ち抜いて優秀な人材を引き留めるためには、これに見合ったインセンティブが不可欠であるとの見解を示しています。
しかし、こうしたグローバル基準を盾にした会社側の論理は、オランダ国内では火に油を注ぐ結果となっています。最大の理由は、KLMが現在直面している厳しいコスト削減策との強烈な矛盾です。同社は財務の立て直しを理由に、近年間接部門を中心に250人規模の人員削減を発表しました。さらに、現場の一般従業員に対しては厳しい経営状況を理由に賃上げの抑制を求めています。従業員にリストラや我慢を強いる一方で、トップが基本給の1.5倍を超えるボーナスを受け取る構図に対し、労働組合は不公平な決定だと批判しており、ストライキなどの実力行使に発展する火種となっています。
事態を重く見たオランダ政府も異例の介入に動きました。同グループの株式を約9.1%保有する重要な少数株主の立場から、エールコ・ハイネン財務相はCEOの報酬増額を不適切であり不釣り合いだと公の場で強く非難しています。従業員に犠牲を強いるのであれば経営陣も共に負担を分かち合うべきであり、これは社内外に間違ったメッセージを送ることになると苦言を呈し、近く開催される株主総会において、政府としてこの役員報酬案に正式に反対票を投じる方針を固めました。
契約とグローバル基準の正当性を主張する会社側と、連帯責任と公平性を重んじるオランダ社会との間に生じたこの深い溝は、コスト削減の矢面に立たされる現場の感情を置き去りにした報酬問題として、同グループの今後のガバナンス体制に大きな課題を突きつけていると言えます。
またこのような批判の構図は、世界的に最高経営責任者の報酬が低いとされる日本にも似た面があると言え、今後どのような結末となるのか注目です。Photo : KLM




