ANAとJALは2026年5月27日、「2050年航空輸送におけるCO2排出実質ゼロへ向けて(第2版)」と題した共同レポートを発表しました。2021年10月の初版から5年が経過し、両社は持続可能な航空燃料(SAF)の確保が一企業の環境対策の範疇を超え、国家の航空競争力を左右する経済安全保障の課題へと発展しているとの認識を示しています。

航空業界は全世界のCO2排出量の約2%を占めており、大幅な削減が技術的に困難であるという課題を抱えています。国際航空運送協会(IATA)の2023年調査によると、日本の航空輸送は200万人の雇用と年間約17兆円規模(GDPの2.8%)の経済波及効果をもたらしており、観光立国の推進や地方のライフライン維持に不可欠なインフラです。この基盤を維持するためには、従来のジェット燃料に比べてライフサイクルCO2を最大約80%削減できるSAFの導入が最大の鍵となります。
しかし、SAFを取り巻く現状は厳しさを増しています。ATAG(航空輸送行動グループ)が2026年1月に公開したレポートによれば、2050年に38%〜58%のCO2をSAFで削減する想定の中、2025年現在の世界におけるSAF供給量は全燃料のわずか0.6%に留まっています。さらに、主原料である廃食油の争奪戦が世界的に起きており、SAFの製造・調達コストは従来のジェット燃料と比較して3倍から5倍程度に高騰しています。国内で十分なSAFが確保できなければ、日本が就航地として選ばれなくなる「ジャパン・パッシング」を招く恐れがあるとしています。
世界各国でSAF導入のアプローチが分かれる中、両社は実効性のある独自の「日本型モデル」の構築と公平なコスト分担を訴えています。環境規制を背景にSAFの混合使用を義務化した欧州では供給能力が限られる中での急進的な導入が価格高騰を招いており、一方シンガポールでは2027年から政府が利用者に賦課金を課してSAFを一括調達する制度が導入される予定です。日本国内においては、両社が掲げる「2030年に燃料の10%をSAFに置き換える」という目標達成に向け、供給能力と制度導入速度のバランスをとった仕組みづくりが求められています。
脱炭素にかかる高コストへの対応として、ANAとJALはそれぞれ法人顧客向けにSAFが創出する排出量削減の環境価値を提供するプログラム(ANAの「SAF Flight Initiative」、JALの「JAL Corporate SAF Program」)を展開しており、現在延べ358の企業および団体が参画しています。両社は今後も競合の垣根を越えて知恵を出し合い、社会全体で脱炭素コストを分かち合う共創モデルを通じて、国産SAFのバリューチェーン構築と日本経済のさらなる成長に貢献していく誓いを強調しました。Photo : JAL




