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国交省、国内航空ネットワーク維持へ大転換 出資規制廃止や独禁法適用除外など踏み込んだ施策

 国土交通省は2026年5月29日、「国内航空のあり方に関する有識者会議」の報告書を公表しました。新型コロナウイルス感染症を経た構造変化により、国内線事業の収支が実質的な赤字に転落するなか、国民生活や地域経済を支える航空ネットワークを維持・発展させるための具体的な方針が示されました。同日付で、独占禁止法の適用除外に関するガイドラインが策定されたほか、大手航空会社による特定既存航空会社への出資規制を廃止するための通達改正も実施されるなど、航空政策の大きな転換点となります

1. 国内航空の危機的現状と背景:2024年度は実質赤字へ転落

 我が国の国内航空需要は、旅客数ベースで見ればコロナ前の水準を回復しつつあります。しかしその内実を分析すると、オンライン会議の普及などを背景に、比較的高単価なビジネス需要が依然として減少したままとなっています。これにより平日の需要が落ち込むなど、需要構造そのものが変化しています

 一方で供給側のコストは劇的に上昇しています。航空輸送産業は、機材や部品の調達、海外での重整備など外貨建て費用の割合が大きいため、近年の円安による影響をダイレクトに受けています。さらに、世界的な物価高に伴う燃油費や整備費、人件費の上昇が重なり、営業費用は大幅に増加しました。主要6社の国内線事業における営業損益(公租公課の軽減効果を除いた実質値)は、2024年度には実質的に赤字へ転落しており、特に国内専業の航空会社は極めて厳しい経営状況に直面しています。有識者会議は、これらコストの上昇傾向を一時的なものではなく「不可逆的なもの」と捉え、新たな産業構造への再構築が必要であると指摘しました

2. 独禁法の壁を破る「路線協調」と「供給量調整」の容認

 厳しい経営環境下でもネットワークを維持するため、報告書ではこれまでの「自由競争一辺倒」から、路線の特性に応じた「航空会社間の協調」へと舵を切る方針が打ち出されました

 具体的には、複数社が同一時間帯に同一路線で過度に重複した運航を行う「ダイヤの重複」について、利便性向上や需要開拓の観点から事業者間でのダイヤ調整を促します。これまで事業者間の調整は独占禁止法との関係から実施しにくい状況にありましたが、一定の要件を満たせば原則として問題ないとする解釈が明確に示されました

 さらに踏み込んだ施策として、便数調整や運航社の集約といった「供給量も含めた調整」についても、航空法第110条第1号に基づく独占禁止法の適用除外規定を活用する方針が示されました。対象となるのは、離島航空路線などの「地域住民の生活に必要な路線」だけでなく、地域の経済的中心都市との往来に必要な「地域の社会経済活動において重要な路線」も概念的に含まれます。ただし、競争維持の原則から対象は限定的とされ、将来見通しを含めて赤字であることや、航空路がなければ同日中の往来が不可能な路線であること、幹線(高需要路線)ではないことなどの厳格な要件が課されます

3. 大手による出資規制を廃止、経営の自由度向上と発着枠回収ルール

 今回の見直しにおける最大の目玉の一つが、大手航空会社(JAL・ANAグループ)による特定既存航空会社(スカイマーク、AIRDO、ソラシドエア、スターフライヤー)への出資規制の廃止です

 従来、新規参入の育成と独立性確保を目的として、大手から特定既存航空会社への出資比率は実質20%までに制限されていました。しかし、優先配分の終了からすでに約15年が経過し、各社が一定の経営規模(保有機材数12機)を概ね達成したことから、現下の事業環境の変化に適応するため、M&Aも含めた経営判断の自由度を増すべきであると結論付けられました

 出資規制が廃止される一方、過度な独占や競争の阻害を防ぐための安全弁も設けられました。大手による出資比率が20%を超える場合などには、羽田空港の発着枠を特定既存航空会社の保有枠の10%を超えない範囲で「回収・再配分」します。この再配分は、出資拡大に関わらない他の特定既存航空会社に対してのみ行われます。さらに、特定既存4社すべてが大手傘下に入るなど、競争環境が過度に阻害される状況が生じた場合は、この回収・再配分の考え方を再検討するなどの適切な措置を講じることとしています

4. 運賃モニタリングとインバウンド獲得による持続可能な成長戦略

 運賃政策においては、近年頻繁に行われている航空券の「セール販売」について、中長期的に利用者の期待運賃を下げ、持続可能性の観点から適切なマーケティング施策とは言えないとの懸念が示されました。行政の監視のあり方についても、従来の「略奪的運賃」の判断基準である「変動費」の定義を見直し、運航に連動する人件費などを考慮すべきか検討を進めます。また、協調が進む路線を中心に実勢運賃の動向をモニタリングし、利用者に分かりやすく公表することで、不当な高騰や引き下げが起きていないか監視します

 また、人口減少下での新たな需要喚起策として、インバウンド(訪日外国人旅客)の国内線取り込みが急務とされました。現状、訪日客が国内移動で航空を利用する割合は2〜4%程度と極めて低くなっています。そのため、2026年度(令和8年度)からは国際観光旅客税を活用した補助事業の対象を国内線にも拡充し、搭乗手続きの円滑化や空港アクセスの改善などを支援します。特に、ノウハウの乏しい地方の地域航空会社に対しては、国や地域による販路拡大などの伴走支援を継続します

 そのほか、離島などの生活の足である地域航空のプロペラ機(ATR機)の就航率向上のため、官民連携による技術支援やリモート整備の導入検討、また定時性向上に向けた管制の担当範囲変更や機内持込手荷物の制限厳格化といったソフト面での改革も並行して進めていく方針です

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