中国当局が、欧州の航空機メーカーであるエアバス製の旅客機の引き渡し承認を意図的に遅らせている模様です。この背景には、中国の国産旅客機「C919」の欧州での型式証明取得を有利に進めるための外交的な駆け引きがあると見られています。
現在、中国民用航空局(CAAC)は、製造が完了して引き渡し準備が整っているエアバス機の最終承認を数ヶ月間にわたり保留しています。これは機体の安全性や品質の問題ではなく、いわゆる事務的な手続きが理由とされています。エアバスのギヨーム・フォーリ最高経営責任者(CEO)も先日の決算発表において、この遅延によって約20機の納入が滞っていることに言及しました。
この狙いは、欧州航空安全局(EASA)の審査プロセスに対する圧力だと考えられています。中国の中国商用飛機(COMAC)は、エアバスA320neoやボーイング737MAXの競合機として「C919」を開発しました。同機を世界市場へ展開するためには海外の主要当局による認証が不可欠ですが、EASAの厳格で透明性を求める審査プロセスには通常3年から6年を要するとも言われています。中国側はこれに焦りを感じており、巨大な国内市場を武器にエアバスの納入を人質に取ることで、欧州側にC919の認証を急がせるよう強硬な姿勢をとっている構図です。
しかし、こうした手法は中国自身にとっても大きなリスクを伴います。既存の契約を反故にするような政治的介入は、国際的な航空機リース会社や金融機関からの信用低下にもつながります。今後の機材調達におけるリスク評価が厳しくなれば、結果として中国の航空会社自身の首を絞めることになりかねません。
今回の事態は、単なる一企業と一国の摩擦にとどまるものではありません。安全性が最優先されるべき航空機の認証プロセスに、国家間の政治的圧力が介入する悪しき前例となる恐れがあるからです。各国の航空会社が描く事業計画や、グローバルな航空機サプライチェーン全体が、新興メーカーの台頭と地政学的な駆け引きによって大きく揺さぶられています。欧州側がこの圧力にどう対応していくのか、今後の動向に世界的な注目が集まっています。Photo : COMAC
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