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トキエアが定期便就航を目指す佐渡空港というところ

 近年、人口減少などの影響により全国各地で地方路線の維持が大きな課題となるなか、あえて地方路線である「佐渡路線」を就航させようと挑戦する新潟の地域航空会社「トキエア」の姿は、非常に面白い試みです。今回、チャーター便の運航に合わせて現地を取材するため佐渡へ足を運ぶと、そこには想像以上の活気があふれていました。

 地方の観光地というと静かなイメージを抱きがちですが、島へのメインの渡航手段である「佐渡汽船」は大盛況で、外国人観光客の姿も多く見受けられます。日本の原風景や歴史的遺産を求めて海を渡るインバウンド層が確実に増加しており、島全体が新しいエネルギーを受け入れているのを感じました。

 一方で、実際に足を運んでみると佐渡汽船の料金が意外と高いことにも気づかされます。現在(2026年5月時点)、新潟〜両津航路の大人片道運賃は、カーフェリーの2等室が3,290円、高速船のジェットフォイルが7,970円かかります。さらに、2026年7月からは燃油価格の高騰により280円の調整金が加算され、それぞれ3,570円、8,250円へと負担が増す予定です。こうした既存の渡航手段の運賃水準や所要時間を考慮すると、ここに航空路線という新たな選択肢が加わる意義は決して小さくありません。また、観光客の増加に伴い島内を走る路線バスはクレジットカードのタッチ決済に対応するなど、旅行者の利便性向上に向けたアップデートも着々と進んでいます。

 ちなみにこのジェットフォイル、船体の一部に「BOEING」の文字が刻まれているのをご存知でしょうか。実はアメリカの航空機メーカー・ボーイング社が開発した「ボーイング929」という型式であり、航空機と同じガスタービンエンジンを搭載し、揚力によって文字通り「海を飛ぶ」船なのです。「海を飛ぶボーイング」が現在の佐渡の大動脈を担っているという事実は、「空を飛ぶ」トキエアの就航を控えた今の状況と重ね合わせると、なんとも興味深い縁を感じさせます。



 島内の主要エリアが活気づく一方で、トキエアが就航を目指す「佐渡空港」は、のどかな空気に包まれています。平屋建ての静かなターミナルビルに足を踏み入れると、そこには懐かしい雰囲気が漂っていました。レトロな木製のチェックインカウンターが残る一方で、青く塗られた真新しい保安検査室の扉もあり、運航再開に向けた準備の跡が窺えます。世界文化遺産登録で盛り上がる「佐渡島の金山」をアピールするのぼりも立てられており、空からの旅行者を迎え入れる日を静かに待っているようです。


 また、空港周辺がいい意味で「田舎すぎる」のも非常に面白いポイントです。見渡す限りの田園風景の中にぽつんと佇むツタに覆われた空港最寄り(約10分)の小さなバス停(秋津)や、のどかな一本道に立つ標識など、都会の喧騒から完全に切り離された離島の小さな飛行場ならではの原風景が広がっています。

 かつて、欧州最大のLCCであるライアンエアのCEOが「とりあえず田舎の空港に飛行機を飛ばしておけば、あとは勝手に発展する」といった趣旨の発言をしていました。もちろん、低価格で自ら需要を創出し利益を徹底追求するLCCと、地域密着型のリージョナルエアラインであるトキエアとでは、根幹となるビジネスモデルが異なります。しかし、この「田舎すぎる」佐渡空港に空路が拓かれ、新たな人の流れが生まれることで地域が自走して発展していくのではないかという、LCCの戦略にも通じる似たようなダイナミズムを感じずにはいられません。

 現在はとても静かなこの空港とその周辺ですが、仮にトキエアの運航が本格化し、空の便で直接多くの人が降り立つようになれば、こののどかな町にどのような変化が起こるのでしょうか。地方航空路線の新たなビジネスモデルが成功を収めるのか、そして空路の復活が佐渡という島をどう変えていくのか。トキエアの果敢な挑戦に、引き続き注目していきたいと思います。

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