2026年5月3日、イタリアのベネチア発・ニューアーク・リバティー国際空港行きのユナイテッド航空169便(ボーイング767-424ER型機)が、着陸進入中にニュージャージー・ターンパイクの照明柱に接触する事故が発生しました。接触によって落下した照明柱の破片が走行中のトラクタートレーラーを直撃し、運転手が軽傷を負ったものの、乗客乗員231名にけがはありませんでした。米国国家運輸安全委員会(NTSB)が発表した予備報告書により、大惨事の一歩手前だったこの事故の詳細な背景が明らかになりました。
ニューアークへの降下中、度重なる滑走路変更を指示された同便は、最終的に滑走路29へのRNAV進入を割り当てられました。着陸直前は最大30ノットの突風が吹く厳しい気象条件であり、機長は高度約880フィートでオートパイロットとオートスロットルを解除し、手動操縦に移行しました。
報告書において最も注目すべき点は、機長が最終進入時にPAPI(進入角指示器)で「赤3つ、白1つ」が見える状態を意図して飛行していたと証言していることです。通常、適正な進入角度を示すのは「赤2つ、白2つ」であり、「赤3つ」の表示は、機体が適正な進入経路よりも意図的に低い高度を飛んでいたことを意味します。
なぜ機長は意図的に低高度で進入したのでしょうか。報告書には、機長の言葉として「それが滑走路29に対する自身の望ましい見え方(sight picture)であったため」と記載されています。その背景を解き明かす鍵となるのが、事故後にユナイテッド航空が発出した安全警告です。同社はこの警告を「短い滑走路での着陸」に関する規定として発出しています。つまり、機長は滑走路29での停止距離を少しでも長く確保しようと、意図的に接地目標点を手前にずらして進入する「ダッキング・アンダー」というテクニックを用いていたことが示唆されています。
しかし、この意図的な低高度飛行に加え、突風への対応でスロットルを絞ったことにより、機体の対気速度は徐々に低下していきました。計器を注視していた副操縦士は「速度が遅く、高度も少し低い」と警告を発したものの、ふたたび外を見た際にはすでに接地寸前となっており、ゴーアラウンドを声に出して指示する余裕がありませんでした。
フライトデータによると、滑走路より5フィート高い有料道路上空を通過した際、機体の対地高度はわずか18フィートまで低下しており、その直後に高さ15フィートの照明柱に接触しました。航空機自体が直にトラックへ衝突したわけではないことは、車両にタイヤの跡が残っていないことからも証明されていますが、落下物によってトレーラーの車体には穴が開くなどの被害が出ました。一方、当該機は左主脚のタイヤに切り傷を負い、左後部胴体下部には長さ46インチに及ぶ穴が開くなど、機体構造に損傷を受けました。



この事態を重く見たユナイテッド航空は、ダッキング・アンダーが有視界飛行区間での危険な低高度進入の一因になり得るとして強く注意喚起を行いました。着陸時は必ず滑走路端から1500フィート(最低でも1000フィート以降)の地点に接地するという社内規定の順守を改めて徹底させています。NTSBによる詳細な原因調査は現在も続けられています。Photo : NTSB




