欧州航空機大手のエアバスにおいて、会社側が打ち出した「週4日のオフィス出社」方針を巡り、労使間の対立が深刻化しています。経営陣はサプライチェーン問題に起因する生産の遅れを取り戻すために対面での連携強化を主張する一方で、労働組合側は「構造的な問題の責任を現場に転嫁している」として強く反発しており、ストライキや抗議集会に発展する事態となっています。
事の発端は、2026年6月9日にギヨーム・フォーリ最高経営責任者(CEO)が事務系および技術系の従業員に向けて発信した社内書簡です。この中でフォーリCEOは、現在週3日とされているオフィス出社日数の最低ラインを、今年9月から週4日へと引き上げる方針を通達しました。エアバスは今年、民間航空機870機の引き渡しを目標に掲げていますが、エンジン不足をはじめとするサプライチェーンの混乱が長引き、年初からの納入実績は想定を下回るペースで推移しています。経営陣は、この難局を乗り越え生産ペースを加速させるためには、従業員同士の直接的なコミュニケーションと連携の強化が不可欠であると判断し、テレワークの比率を下げてオフィスでの業務時間を増やすことが打開策になると説明しています。
しかし、この会社側の一方的な方針転換に対し、フランスの主要な労働組合は一斉に抗議の声を上げました。労働組合側の主張の核心は、現在の生産遅延はサプライチェーン全体の構造的なボトルネックや過去の経営判断に起因するものであり、従業員のテレワークが原因ではないという点です。CFDTやUNSAなどの主要労組は、会社側が生産目標未達の責任を現場の労働者に押し付けていると強く批判しています。実際にCFDTが実施した約2,400名が回答した組合員アンケートでは、週4日出社を実施した場合、現状のオフィスのキャパシティでは対応しきれないといった物理的な問題も指摘されています。さらに、トゥールーズ近郊のブラニャック拠点などでは、CGTの主導によるストライキや抗議集会が複数回実施されるなど、現場の不満は実力行使へと発展しています。
労働組合側は法的な観点からも徹底抗戦の構えを見せています。フランス国内では2024年に改定されたハイブリッドワークに関する労使協定が2028年まで有効となっており、FOやUNSAは、CEOの意向であっても既存の協定を無視した一方的な労働条件の変更は無効であると主張し、新たな出社要請には応じないよう呼びかけています。この動きはフランス国内にとどまらず、ドイツの労働組合も自国の労使協定を根拠に同調する姿勢を見せており、影響は欧州全体の拠点へと波紋を広げています。サプライチェーンの正常化と増産体制の構築という至上命題を抱えるエアバスにとって、従業員のモチベーション低下と労使関係の悪化は致命傷になりかねません。目標達成に向けた道筋と現場との信頼関係の再構築をどのように両立させるのか、同社の経営陣は極めて難しい舵取りを迫られています。Photo : Airbus




