ニュージーランド航空は、ロールス・ロイス製トレント1000エンジンの耐久性問題およびサプライチェーンの制約により、オーストラリアの砂漠地帯で長期保管を余儀なくされていた最後のボーイング787-9型機(機体記号:ZK-NZD)を、無事に営業運航へ復帰させました。これにより、同社を長年悩ませてきた大規模な機材不足問題は事実上の終結を迎え、日本路線を含む長距離国際線ネットワークの本格的な反転攻勢へと舵を切ることになります。
航空運航データによると、アリススプリングスで保存されていたZK-NZDは、先月後半に本拠地であるオークランドへとフェリーフライトされました。現地での最終調整を終えた同機は、すぐさまオークランド発サンフランシスコ行きのNZ8便として営業運航に投入され、その後もラロトンガ、ナンディ、ブリスベン、パースといった主要路線をトラブルなく順調に運航しています。
今回の復帰は、同社にとって単なる1機の戦線復帰以上の重みを持ちます。ロールス・ロイス製エンジンのブレード耐久性問題は世界中の787オペレーターに深刻な影響を与えましたが、ニュージーランド航空はその最大の影響を受けたエアラインの一つでした。ピーク時には保有する14機のドリームライナーのうち、約35%にあたる5機が同時に地上待機を余儀なくされるという異常事態に直面していました。
この間、同社は国際線の運航規模を維持するため、旧キャセイパシフィック航空のボーイング777-300ERを機材・乗務員ごとチャーターする「ウェットリース」などの緊急措置を講じてきましたが、これにともなう追加コストや運航調整は同社の収益を圧迫し続けていました。今回の全機復帰により、こうした高コストな暫定運用からは完全に脱却できる見通しです。
また、サプライチェーンが世界的に停滞するなか、同社はアリススプリングスの保管施設と緊密に連携し、砂漠の現地で直接エンジンを取り外してオーバーホールへ送るという戦略を採用しました。これにより、機体を別の整備拠点へ回航する手間の削減や物流の効率化に成功し、結果としてダウンタイムを最大で約6ヶ月も短縮させるという成果を上げています。
フリートの正常化を受け、ニュージーランド航空はこれまで抑制されていた国際線キャパシティの再拡大に乗り出します。オークランドに集約されていた長距離ネットワークを分散させ、南島の玄関口であるクライストチャーチ発着の国際線を強化する方針で、既に成田線が再開となることが発表されています。
長期保管されていた機体には、地上待機期間を利用して新しいビジネスクラスやプレミアムエコノミー、機能性を向上させたエコノミークラスへの全面的な機内改修が施されており、今年末までに全フリートの更新が完了する予定です。長年続いた「エンジンの悪夢」を乗り越えたニュージーランド航空は、プロダクトの刷新と路線網の復活を武器に、太平洋およびアジア市場での競争力を急速に取り戻していく構えです。Photo : Air New Zealand




