2025年11月にケンタッキー州ルイビルで発生したUPSのMD-11Fの墜落事故について、国家運輸安全委員会(NTSB)の調査が続く中、事故の背景に関する新たな事実が浮上しました。今週公開されたNTSBの公聴会後提出文書において、UPSが「ボーイングの不適切な助言が原因で詳細な追加点検を見送った」として、同社を非難する姿勢を示していることが明らかになりました。
事故は2025年11月4日、ハワイへ向けて離陸中だったUPSの2976便で発生しました。離陸直後に左エンジンが主翼から脱落し、機体は滑走路先の工業地帯に墜落。乗員3名と地上の12名が死亡、22名が負傷するという甚大な被害をもたらしました。この致命的な事故を受け、UPSは保有するMD-11F型機の一時的な全機地上待機措置を取り、最終的には同型機を完全に退役させる決定を下しています。
事故の直接的な原因は離陸時のエンジン脱落ですが、現在NTSBの調査で焦点となっているのは、エンジンを主翼に固定するパイロン(支柱)の球面ベアリングの欠陥です。今月1日に公開されたNTSBの文書の中で、UPSは「この問題は飛行の安全性に関わるものではなく、既存の整備計画文書に基づく点検で十分である」というボーイング側の表明を信頼していたと主張しました。その結果、UPSは既に実施している保守プログラム以上の追加的な変更や、より高度な特別点検は必要ないと判断したと述べています。



さらに、機体の整備を請け負っていたSTE San Antonio Aerospaceも提出文書の中で、ボーイングからの指示の曖昧さを指摘しています。同社によれば、ボーイングは検査要件の変更が妥当であるとしつつも、同じ書簡の中で既存の要件で十分であるとも述べていたということです。
ただこのような重大事故が単一の要因で発生することは稀であり、現地の専門家は製造元のボーイング、運航および整備判断を下したUPS、連邦航空局(FAA)、そして整備会社の4者すべてに何らかの責任の余地があると指摘しています。NTSBが最終報告に向けて、これら複数の当事者間でどのように責任を配分し、再発防止に向けた勧告をまとめるのか、今後の調査の行方が注目されます。Photo : NTSB




