エアバスのスペイン拠点において、労働環境の悪化やインフレを下回る賃上げに対する不満から、労働組合主導によるストライキが7月1日より実施されています。同社は今年、民間機870機の納入という野心的な目標を掲げていますが、既存のサプライチェーン問題に労使対立が加わり、今後のデリバリースケジュールへの影響が強く懸念されています。
今回のストライキを主導しているのは航空専門家独立組合(SIPA)であり、7月末まで1ヶ月間にわたり抗議行動を継続する方針です。組合側は、会社が記録的な業績を達成しているにもかかわらず、従業員に対するインフレ連動型の賃上げが十分に行われていないと非難しています。また、出退勤管理の厳格化や、リモートワーク日数の削減(週2日から1日への短縮)など、パンデミック以降の柔軟な労働環境が奪われていることも大きな争点となっています。先月にはフランスの拠点でもリモートワーク削減に対する同様の抗議行動が起きており、欧州各拠点で労働者の不満が表面化している形です。
ストライキの影響は、すでに生産現場の最前線に及んでいます。対象となるのはマドリードやアンダルシアなど計8拠点、約14,000人の労働者です。特にエアバスにとって世界第3位の規模を誇るマドリード近郊のヘタフェ工場では、約9,000人の従業員のうち約3,000人のエンジニアらが職場を離脱しました。一部報道によれば、航空機の検査やエンジニアリング・チェックなどの重要タスクが通常通り行えない状態に陥っており、A320ファミリーやA350といった主力民間機に加え、ユーロファイターなどの防衛プログラムの部品製造や組み立てにも遅れが生じ始めています。
事態の長期化を受け、当初は沈黙を保っていたエアバス経営陣も姿勢を軟化させています。7月10日、同社経営陣は「従業員の懸念事項は認識している」とする公式声明を発表し、労働側との対話のテーブルに着く用意があることを初めて表明しました。
しかし、航空業界にとって最大の懸念は秋以降のエスカレーションです。現在ストライキを静観しているスペインのエアバス内で最大規模の労働組合「労働者委員会(CCOO)」は、今回の会社側との交渉で合意に至らない場合、9月7日から全スペイン拠点で無期限ストライキに突入すると公式に警告しています。すでにCCOOの現場組合員の一部がSIPA主導のストライキに独自合流する動きも見られており、現場の不満は組合の垣根を越えて広がっています。
世界的な航空需要の回復に伴い、各航空会社が機材更新や路線網拡大を急ぐ中、エアバスの生産遅延は業界全体に波及する重大なリスクとなります。今月中に行われる労使交渉が、第3四半期以降の生産体制正常化に向けた最大の試金石となりそうです。Photo : Airbus




