ユナイテッド航空は2026年7月14日、新たに受領を開始するエアバスA321XLR型機のエコノミープラスにおいて、中間席を共有テーブルとして活用する新しい特別席を導入すると発表しました。表向きは長距離路線の快適性を高める革新的なサービスとしてアピールされていますが、その背景には米連邦航空局(FAA)の規定と客室乗務員の人員配置最適化という戦略的な意図が透けて見えます。

同社の発表によれば、導入予定のA321XLR全50機を対象に、エコノミープラスの特定の1列の中間席をあえて販売せず、巨大な専用テーブルを設置します。このテーブルはアームレスト間にしっかりと固定され、表面には革張りの加工が施されており、カップホルダーが2つ設けられています。ユナイテッド航空のアンドリュー・ノセラ最高商業責任者(CCO)は、足元だけでなく肘周りにも余裕を持たせたことで、利用客に新たな選択肢になると自信を見せています。
A321XLRは、同社にとってボーイング757の後継となる機材です。ドア付きの個室型ビジネスクラス「ポラリス」を搭載するなどプレミアム戦略を強化しており、今秋から北米国内線に投入され、2027年初頭には本格的な大西洋横断ルートなどの国際線へデビューする予定です。なお、この特別席の販売は今年後半に開始される見通しです。
一方で、この座席仕様の導入については、航空業界内で乗客の快適性向上とは別の明確な目的が指摘されています。それが客室乗務員の乗務要件の削減です。FAAの安全規定では、航空機は座席50席につき最低1名の乗務員を配置する必要があります。A321XLRの標準的な座席配置は、ビジネスクラス20席、プレミアムエコノミー12席、エコノミークラス120席の計152席となります。150席であれば乗務員は最低3名で済みますが、152席になった瞬間に最低4名が必要となり、さらにポラリスのようなドア付き個室座席を設置している場合は追加の要件が発生し、トータルで最低5名の乗務が必要になるケースがあります。
今回、エコノミープラスの中間席2席を物理的なテーブルで完全にブロックすることで、FAAの規定上の総座席数を150席へと引き下げることが可能になります。これにより、一部のフライトにおいて乗務員の人数を5名から4名へ削減することが合法的に実現します。
ユナイテッド航空は発表のなかで、大部分の大西洋横断路線では従来通り5名の乗務員を配置すると強調し、サービス水準の低下を懸念する声への火消しを図っています。しかし、長距離を飛行するナローボディ機の収益性は非常にシビアであり、近年の新労働協約による人件費高騰も経営課題となっています。この中間席ブロックにより、急な欠員時にもフライトをキャンセルすることなく4名で運航できるエマージェンシー体制を構築できるほか、需要の少ないオフシーズンの路線では意図的に4名体制で運航し、コストを圧縮する選択肢を持つことになります。
座席を2席分潰して得られる快適性が乗客にどのように評価されるのか、そしてこの150席仕様が長距離ナローボディ機市場における新たなスタンダードとなるのか、今後の運用動向が注目されます。Photo : United Airlines




