アメリカの超低コスト航空会社(ULCC)として知られるアレジアント航空は、機内での顧客体験を大幅に向上させる方針を発表しました。2027年春から一部機材でファーストクラス「Allegiant First」を導入するほか、それに先駆けて2026年8月1日よりエコノミークラスでのソフトドリンクの無料提供を開始します。アメリカのULCC業界において、プレミアム化へのシフトが一段と鮮明になっています。
新たに導入されるファーストクラス「Allegiant First」は、2-2配列の2列、計8席で構成されます。シートピッチは37インチ、リクライニングは5インチとなり、カーフレストや調節可能なヘッドレストが完備される予定です。

座席のハード面に加え、優先チェックインや優先搭乗などの特典も付与されます。また、同クラスの運賃には、機内持ち込み手荷物1個および身の回り品1個に加え、最大70ポンド(約31.7kg)までの受託手荷物1個が含まれます。なお、既存の足元の広いエコノミー席「Allegiant Extra」も引き続き併売されます。「Allegiant First」を搭載したフライトの航空券は2026年8月中旬より販売が開始され、2027年春に運航を開始する予定です。初期の導入路線はフロリダ州のフォートマイヤーズ発着路線となる見込みです。
プレミアムな体験の提供は前方の座席にとどまりません。同社はこれまで、機内サービスをすべて有料とする徹底したULCCモデルを貫いていましたが、2026年8月1日より、エコノミークラスの全乗客を対象に水やジュースなどのノンアルコールドリンクを無料で提供する方針に転換します。アルコール類や一部のアップグレード飲料(コールドブリューコーヒー等)については、引き続き有料での販売となります。
今回のアレジアント航空の動きに限らず、アメリカではULCCやLCCが相次いでプレミアム路線へと舵を切っています。この背景には、航空業界における競争環境と消費者ニーズの構造的な変化があります。
第一に、デルタ航空やユナイテッド航空などの大手エアラインが、サービスを削って運賃を下げた「ベーシックエコノミー」を本格展開したことで、ULCCの最大の武器であった「価格優位性」だけでは差別化が難しくなりました。第二に、構造的なコスト上昇です。人件費や燃油代が高騰し、従来の「コストを極限まで削って安く飛ばす」というビジネスモデルが限界に近づいています。そのため、各社は利益率の非常に高いプレミアム座席や付加サービスの販売を強化せざるを得ない状況にあります。
さらに、レジャー旅行者の中にも「少し高くても快適に移動したい」という「プレミアム・レジャー」の需要が定着しました。今回のサービス向上策は、アレジアント航空がサンカントリー航空を買収し、両社の統合を進める中で打ち出されたものですが、同社のドリュー・ウェルズCCOも「旅行者はより高い快適性とパーソナライズされた体験を求めている」と語っています。
サウスウエスト航空の指定席制・足元の広い座席の導入決定などと同様に、アレジアント航空の今回の決断も、単なるサービス拡充にとどまらず、LCCのビジネスモデルが新たなフェーズへ移行していることを象徴する出来事と言えます。Photo : Allegiant Air




