カンタスグループは2026年8月4日、ジェットスター・ジャパンの資本構成変更に関し、自社株買いを通じた拘束力のある最終契約を日本航空(JAL)と締結したと発表しました。これにより、カンタスグループは保有する33.32%の株式をすべて売却し、ジェットスター・ジャパンの経営から完全に撤退します。この手続きは2026年2月に結ばれた基本合意書に基づくもので、今後は新たに日本政策投資銀行が新規株主として資本参加する一方、日本航空と東京センチュリーは現在の出資比率を維持します。規制当局の承認を経て、2027年6月までにすべてのプロセスが完了する予定です。
今回の取引額は82億円に上ります。カンタス側はこれにより、2027年度を中心に約1億1,500万豪ドルの特別利益を計上する見込みで、得られた資金はオーストラリア国内および国際線の自社ネットワーク強化に再投資されます。そしてジェットスター・ジャパンは今後、全く新しいアイデンティティを持つ日本のLCCとして再出発を図ることになります。
今回のジェットスター・ジャパンからの資本撤退は、単なる一国での合弁解消にとどまらず、かつて「ジェットスター」ブランドを武器にアジア全域を席巻しようとしたカンタスグループの壮大なアジア・フランチャイズ戦略の幕引きという意味合いを強く持っています。
同グループは2000年代後半から、急成長するアジアの航空需要を取り込むため、現地の資本と組んで各地にLCCを設立してきました。しかし近年は、その方針を明確に転換しています。2020年にはベトナム航空との合弁であったジェットスター・パシフィックの株式(30%)を手放し、同社は「パシフィック航空」としてグループから離脱しました。さらに記憶に新しい2025年7月には、20年以上にわたり東南アジアのハブとして機能してきたシンガポールのジェットスター・アジアの運航を終了させました。カンタスは49%を出資していた同社の事業を清算し、保有していた機材を自国市場へと引き揚げています。
こうしたアジア拠点の相次ぐ閉鎖と撤退の背景には、激化する競争とコスト高騰による収益性の悪化、そして自社への徹底した資本集中という明確な経営判断があります。東南アジアや北東アジアでは、エアアジアグループやセブパシフィック航空、さらには各国のメガキャリアが設立したLCCが台頭し、運賃競争が極限まで激化しています。ジェットスター・アジアのケースでも、空港使用料の高騰などが致命傷となり、求める投資リターンを維持できなくなったことが要因とされています。
現在、カンタスグループが最も優先しているのは、超長距離直行便を実現する「プロジェクト・サンライズ」を含めた歴史的な機材更新プログラムと、圧倒的なシェアを持つオセアニア市場の基盤強化です。薄利多売のアジア合弁事業にリソースを分散させるよりも、自社の最新鋭機でオーストラリアからアジアの主要都市へ直接飛ぶモデルへシフトする方が、グループ全体での利益率が遥かに高いと判断したと考えられます。
なお、カンタス航空およびジェットスター・エアウェイズが運航する日豪間の国際線ネットワークや、日本航空とのコードシェア提携については、今回の資本構成変更による影響を受けず従来通りの運航が維持されます。日本のLCC市場の先駆者として存在感を示してきた同社が新ブランドとして生まれ変わる裏で、カンタスグループのアジア戦略は「自前路線での直行便重視」へと完全にフェーズを移行したと言えます。Photo : Jetstar Japan




