アメリカ運輸安全委員会(NTSB)は、2026年7月10日にギリシャのテッサロニキからドイツのメミンゲンへ向かっていたライアンエアー1879便(マルタ航空運航、ボーイング737-8AS型機:9H-QEU)で発生した第2エンジンの損壊事故に関する初期調査報告書を公表しました。この事故では、同機に搭乗していた乗員6名と乗客149名のうち、乗客1名が重傷を負う事態となりました。
報告書によると、同機がテッサロニキ国際空港を離陸して高度約1万6000フィートを上昇中、パイロットは第2エンジンの高振動警告を受けました。エンジンの振動は離陸滑走の終盤から上昇し始めており、パイロットが推力を絞ったことで一時的に低下したものの、その後再び急増しました。離陸開始から約9分20秒後には大きな爆発音とともにオートパイロットが解除され、飛び散ったエンジンの破片がエンジンカバーを突き破って右側11列目の客室窓ガラスと胴体外板を破壊しました。この損傷によって機内は急減圧を起こし、窓際の席にいた乗客1名が外へ吸い出されそうになり重傷を負いましたが、周囲の乗客に引き戻され、乗り合わせた医師による応急処置を受けました。その後、パイロットは直ちに緊急降下を行い、テッサロニキ空港へ無事に引き返しました。



フランスのサフラン・エアクラフト・エンジンズで行われた技術調査では、全24枚のファンブレードのうち「10番ブレード」が根元部分から完全に破断していることが確認されました。破断面の約37%には疲労の痕跡があり、解析の結果、これが通常の飛行サイクルよりも高い応力振幅と高周波によって引き起こされる「高振幅疲労(HAF)」によるものであることが判明しています。また、同エンジンは事故からわずか253フライトサイクル前である2026年5月24日に、メーカーの指示に基づく超音波探傷検査をクリアしたばかりでした。

さらに、エンジンのオイルクーラー前部などからは鳥の羽を含む残骸が発見されており、過去12ヶ月間に同エンジンで4回のバードストライクが疑われる事象があったことも記録されています。NTSBはバードストライクが直接の原因であるとは断定していませんが、過去の衝撃が今回の金属疲労の発生や進展に与えた影響について引き続き調査を行っています。
2018年に発生したサウスウエスト航空機での同型エンジンのブレード破断死亡事故を受け、米連邦航空局(FAA)はエンジンカバーなどの強化を義務付ける耐空性改善命令を出していましたが、その改修期限は2028年7月となっており、今回の事故機にはまだ施されていませんでした。NTSBは今後、高振幅疲労の根本原因を特定するとともに、規定の改修が行われていれば被害を軽減できたかどうかも含めて詳細な調査を進める方針です。Photo : NTSB




