アメリカン航空は、過去約10年にわたり進めてきた機内エンターテインメントにおける「BYOD(乗客自身の端末利用)」戦略を転換し、ナローボディ機の全席にシートモニターを再導入する方針を明らかにしました。北米市場でしのぎを削るデルタ航空やユナイテッド航空との機内サービスの格差を是正し、収益性の改善を図る狙いがあります。
今回の計画では、800機以上のナローボディ機が対象となります。2028年に受領を開始するエアバスおよびボーイングの新造機からシートモニターが標準装備されるほか、既存機への改修作業も同年にスタートし、2030年代前半までに完了する見通しです。新たに導入されるシステムは4Kディスプレイを備え、Bluetooth接続、USB-C急速充電機能、パーソナライズされたインタラクティブ・フライトマップに対応します。また、並行して高速通信「Starlink(スターリンク)」の導入も進められます。
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アメリカン航空は2017年、ボーイング737MAXの導入を機に、ナローボディ機におけるシートモニターの廃止を決定していました。当時の経営陣は、乗客の90%以上がスマートフォンやタブレットを機内に持ち込んでいる点に着目し、ストリーミング配信と機内Wi-Fiの強化で十分なエンターテインメントを提供できると判断しました。これにより、モニター導入に伴う機体重量の増加や維持コスト、システムの陳腐化リスクを回避する戦略をとっていました。
しかし、このコスト削減を重視した決定は、結果として競合との明確なサービス格差を生むこととなりました。デルタ航空やユナイテッド航空がシートモニターへの投資を継続するなか、アメリカン航空の機内設備は見劣りする状況が続いていました。
今回、方針を大きく転換した背景には、技術の進化と顧客ニーズの変化があります。モニター等の軽量化と高性能化が進み、かつての懸念材料であったコストや重量のハードルが下がりました。さらに、若年層を中心に「マルチスクリーン」を使いこなすスタイルが定着しており、手元のスマートフォンで通信しつつ、シートモニターで映画を楽しむといった需要が高まっています。
また、業績面でのプレッシャーも戦略見直しの大きな原動力となっています。デルタやユナイテッドが堅調な利益を見込む一方で、アメリカン航空の2026年の業績は損益分岐点付近にとどまる見通しであり、ロバート・アイソムCEOもこの業績格差に強い危機感を示しています。
アメリカン航空は今回のモニター再導入に合わせ、数年かけてナローボディ機のプレミアムシート(ファーストクラスおよびメインキャビン・エクストラ)の比率を現在の約25%から約40%へと大幅に引き上げる計画も発表しました。同社の第2四半期の航空券収入の約半数をプレミアム層が占めている現状を踏まえますと、単価の高いロイヤルカスタマーを確実に取り込むための機内空間の底上げは不可避だったと言えます。
「機内体験における当社史上最大級の投資」と位置づけられた今回の決断。効率重視から顧客体験の向上へと大きく舵を切ったアメリカン航空の戦略が、競争激しい北米市場でのブランド価値復権にどう結びつくのか、今後の展開が注目されます。Photo : American Air




