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2019年7月に発生したアシアナ航空の那覇空港での滑走路誤進入の重大インシデントは、機長の誤認が原因

2019年7月21日に那覇空港で発生したアシアナ航空機による滑走路後進入の重大インシデントは、同機の機長の誤認が原因であった可能性が高いと運輸安全委員会が調査結果を公表しました。

この重大インシデントは、滑走路手前で待機するよう指示を受けていたアシアナ航空機が滑走路に進入したことにより、着陸許可を受けていたJALトランスオーシャン航空機が、着陸をやり直したものとなります。


Photo : JTSB

同機は、誤進入までの経緯は以下の通りです。アシアナ機(A321-231)=A機、JTA機(B737-800)=B機
◇スポット44Rに駐機していたA機は、グラウンドと交信し管制許可を受けプッシュバック停止線D1までプッシュバックした後、右エンジンを始動
◇その直後、APUが自動停止したため、A機は、グラウンドに現在位置で5分待機したい旨を伝えた。その後整備士と協議し運航継続を決定
◇A機はAPU不作動時のエンジン始動手順により左エンジンを始動させた後、地上走行の準備を完了させ、グラウンドに地上走行を要求
◇グラウンドはA機にスポット誘導経路D経由で誘導路E1までの走行を指示し、A機はこれを復唱
◇機長は、D1からE1までの地上走行距離は短く、その間に離陸の準備をしなければいけないため、低速で地上走行
◇A機はタワー交信、E1からの離陸はインターセクション・デパーチャー*となるが、タワーか同意を求められなかったため、チャートを確認するも、那覇空港のインターセクション・デパーチャーに関する情報は掲載されていなかった。そのため機長は、E1は最終的にE0に接続していて滑走路末端からの離陸となるのではないかと思ったため、チャートを再確認
◇タワーはE1に近づいているA機に「HOLD SHORT OF RUNWAY(滑走路手前で待機せよ)」の指示及び標準計器出発方式に係る高度制限解除 の指示をまとめて発出
◇副操縦士は、離陸のために実施していた手順をいったん中断し復唱し、正しいことを確認。このとき機長は「LINE UP AND WAIT(滑走路に入って待機せよ)」との指示を受けたものと誤認。
◇副操縦士は離陸のための手順を再開し、それを終わらせた後、管制指示を踏まえて高度制限解除に伴うFMSの設定変更を行っていた。
◇このときA社の規定に定められている運航乗務員による管制指示の相互確認の手順は行われなかった。
◇タワーは、最終進入中のB機に対し着陸許可を発出
◇機長は最終進入中のB機に発出された着陸許可を聞いていなかった。
◇A機はE1から、管制指示を受けないまま滑走路18に進入。
◇機長は滑走路に入るときに最終進入コースを見たが、B機を発見することはできなかった。副操縦士はFMSの設定変更を行っていたため、機体の位置関係や外部のモニターをしていなかった。
◇B機はA機の進入を確認し、着陸復行を実施する準備
◇タワーが目視でA機の進入を確認し、B機に着陸復行を指示し、B機は着陸復行
◇タワーはA機に現在位置で待機を指示
◇副操縦士はタワーからの指示を復唱し機長に、「我々は滑走路進入の指示は受けていません」と伝える
◇機長がタワーに指示内容を確認
◇タワーは、「HOLD SHORT OF RUNWAY(滑走路手前で待機せよ)」の指示であったこと及びA機からの復唱も同内容であったことを返答。
◇機長は「OH, SORRY ABOUT THAT」と伝える
◇ 次の到着機との間隔があったため、タワーはA機に対して離陸許可を発出し、同機は離陸

*インターセクション・デパーチャーとは、使用可能な滑走路の全長を使用しないで、滑走路の末端以外の、誘導路又は他の滑走路との交差地点から離陸滑走を開始する離陸の方法をいう。管制官がインターセクション・デパーチャーを指示する場合はパイロットの同意を得るものとする。ただし、AIP等に記載された方式による場合を除く。
同空港のインターセクション・デパーチャーについて、AIPには、以下の記載がある。(抜粋) RWY18使用時、出発機はパイロットの同意なしに誘導路E1からのインターセクション・デパーチャーを指示されることがある

以上のやり取りから、運輸安全委員会は以下のように解析しています。

機長は、機体が不具合を抱えていたことに加え、滑走路までの短い地上走行中に、地上走行の順番が一番目であったこと、誘導路の再確認及び高度制限解除に伴う飛行計画の変更等に気を取られた状態であったものと考えられる。その中でタワーが行った「HOLD SHORT OF RUNWAY(滑走路手前で待機せよ)」の指示を「LINE UP AND WAIT(滑走路に入って待機せよ)」の指示を受けたものと思い違いした可能性が考えられる。

副操縦士Aは、タワーが行った「HOLD SHORT OF RUNWAY(滑走路手前で待機せよ)」の指示について正しく復唱していたことから、タワーからの指示については把握していたものと考えられる。しかし、復唱後、まだ離陸のために必要な手順がまだ残っていたこと及び高度制限解除に伴うFMSの設定変更を行わねばならなかったためワークロードが高い状態で管制指示の相互確認ができず、また滑走路18への誤進入に気がつかなかったものと考えられる。

このようなことから、本重大インシデントの原因は、機長の思い違いによるもので、その思い違いが修正されなかったことが原因で発生したものと考えられるとしています。Photo : Asiana Airlines

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