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長距離路線には興味を示さないヴァージンオーストラリア航空が羽田空港にB737で就航する理由

 今週、ヴァージンオーストラリア航空が2023年6月28日に羽田空港に就航することが正式発表され、その使用機材がナローボディ機のB737MAXであることが大きな注目を集めました。

 一部のメディアでは念願の羽田空港就航として報道していますが、その背景にはいくつかの諸事情が絡んでいます。

 同社は、羽田空港の国際線発着枠の拡大に伴い、オーストラリアに新規に割り当てられた発着枠を、カンタス航空との熾烈な争い経て、1往復分を獲得し東京/羽田~ブリスベン線を開設しA330-200で日本に初乗り入れする計画でしたが、新型コロナウイルスの影響を受け、就航できず急速な業績の悪化により事実上の経営破綻に陥りました。

 その後経営再建計画の一環として長距離線用の機材(A330。B777)を手放すことを決定し、羽田線の開設は構想外となったとみられていましたが、ヴァージンオーストラリア航空は当局に対して開設延期の申請を行い、現在も発着スロットを維持した状態となっています。 

 このような状況下でスロットが維持できているのは、コロナの影響により混雑空港に適用されるU/Lルール(Use it or Lose it )が一時停止されているためで、オーストラリアは今冬ダイヤ(2023年末)をもってその一時停止を解除する予定となっています。

 これによりU/Lルールの新規参入事業者に割り当てられたスロットにおいて90日以内に就航しなければそのスロットを手放すというルールが適用されることになり、その最終日が就航日となる2023年6月28日となります。

 この就航日を見ればわかるように、同社が羽田空港に無理してでも就航するのは、一度手放せば今後獲得できないであろう羽田空港の発着枠を維持するためであるのは明白で、当初から更新機材として導入予定のナローボディ機のB737MAXで羽田線に就航可能なケアンズに変更し、無駄なコストをかけずスロットを維持しようとしているものと推測できます。

 今年9月に同社の Jayne Hrdlicka CEOは、長距離便の運航を再開するためにワイドボディ機を導入するかとのメディアの質問に対し「その場しのぎのために、多額の資金を新機材に投資することはない」と発言し、長距離路線には興味を示さず当面は短距離路線に特化する方針としており、現に羽田線以外の中長距離国際線には興味を示していません。

 ただし長期的には、長距離路線に復帰しワイドボディ機の導入が必要との認識を以前に示していることから、B787などの導入を検討しているとみられており、これに伴い将来的には羽田線も機材が大型化され、ワイドボディ機で収益性の高い路線へ振り替えられる可能性が高いと推測されます。

 通常、混雑空港でビジネス客が望める羽田空港の国際路線は、そのスロットを活かすためにビジネスクラスを搭載した大型機を使用するのが通例となっており、今回のようなヴァージンオーストラリア航空のナローボディ機での就航は一過性なものとなる可能性があります。

 今後日本がコロナから脱却し、かつヴァージンオーストラリア航空が無事経営再建を果たしてワイドボディ機を導入した際に、最大限に羽田空港のスロットが活かされることになりそうです。

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