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航空会社のビジネスモデルの変化による成田空港への影響 これらを考慮しワンターミナル化へ

 首都圏の発着枠拡大を見据え、今後の成田空港の在り方を考える『新しい成田空港』構想において、成田空港は今後ワンターミナル化を目指す方針でまとまりましたが、現状の分析及び、議論において指摘された、これからの課題等を紹介します。

 成田空港においては、かつては以遠権運航も含めた米系航空会社の便数シェアが大きかったものの、近年はそのシェアが減少して多様な航空会社が就航しています。こうした経緯もあり、一航空会社のシェアが約40%と突出している仁川空港や桃園空港、香港空港と異なり、成田空港におけるLCCも含めた航空各社の便数シェアは最大でも10~15%にとどまっており、特定の航空会社の影響を受けにくい特色を有しています。

 このようなことから、成田空港には、航空各社の多様なビジネスモデルに合わせて、航空会社がアライアンスや他社との連携を図りやすい環境を整えることが必要であるとしています。

 またコロナ禍の影響により、ビジネス渡航を中心とする高単価需要は完全には元に戻らない可能性が大きいと考えられていることから、本邦大手航空会社では、観光・親族訪問などの中距離・低単価需要マーケットの成長に向けてLCC 事業の強化を図る動きが顕在化しており、成田空港には、FSCとLCCとの垣根が一層低くなる航空会社のビジネスモデルの変化に適切に対応することが求められるとしています。

 次に、北米と東南アジアの乗継市場においてですが、アジアと北米とを結ぶ旅客流動は2010年から2019年で約2倍に成長しており、2040年にはさらに 2019年比で約1.7倍に成長して、2,100万人の新たな旅客流動が創出されると予測されています。東アジアの他空港は、国の戦略として、この乗継市場を取り込んで成長しており、アジアのハブを目指す姿勢が伺えます。

 一方、成田空港は乗継時間帯の発着枠不足などにより、乗継旅客獲得シェアを低下させてきましたが、“更なる機能強化”により、この発着枠不足は改善されることとなります。今後は、成田空港の地政学的優位を活かし、この乗継旅客需要を取り込む努力を強化する必要があるとしており、これにより、直行需要だけでは成り立ちにくい路線の収支が向上し、新規路線の就航や既存路線の増便につながることが期待されるとしています。

 またLCCが主に使用するB737やA320 など、現行小型機材の航続距離は約4,000km であり、仁川空港からはインドシナ半島全体、桃園空港や香港空港からは東南アジアの大部分がその航続距離内に収まる一方、東アジアの東端に位置する成田空港から東南アジア方面への航続距離内エリアは限定的でした。

 しかしながら近年LCCが導入を進めている最新の小型機材では、航続距離が大幅に拡大(A321LRでは約5,500km)しており、東南アジアの大部分が成田空港からの航続距離内に収まることから、東南アジアのセカンダリー都市への新規路線開設の可能性が高まることが期待されます。

 また旅客ターミナルにおいては、3大アライアンスの枠組みにとらわれない航空会社間の多様な提携や国内外LCCの就航、国内線の成長に伴う国際線と国内線の乗継利用の増加など、様々な航空ニーズの変化が進行している一方で、成田空港の旅客ターミナルの配置や施設に起因して、旅客利便性の低下や航空会社・CIQ をはじめとするステークホルダーの運用負荷増大などが生じており、柔軟性と効率性を高めることが必要であるとしています。

 成田空港の旅客ターミナルは、航空需要の増大に対応するために取扱容量の拡大が必要であり、また、既存施設については、リニューアルを繰り返し実施してきているものの、増改築では対応できない構造的な問題や深刻な老朽化が進行しており、建替えなど抜本的な対応が必要な状況にあると指摘しています。

 また成田空港のコンセプトや施設配置は半世紀以上前に決定されたものであり、施設の分散非効率なレイアウトは旅客の不便や航空会社にとって非効率な運用につながっていることから、航空ニーズの変化や施設老朽化への対応とあわせ、閉鎖を伴う大規模改修や建替え等の抜本的な再構築が必要な状況にあります。

 このようなことから、新ターミナルを建築するにあたり、大規模空港における旅客ターミナルは「分散ユニットターミナル」方式と「集約ワンターミナル」方式に大別できますが、それぞれのメリット、デメリットを考慮すると成田空港の目指すべき旅客ターミナルの姿である国際ハブ空港というコンセプトを実現するには、わかりやすさ・乗継利便性・効率性・柔軟性という特徴を有する集約ワンターミナルに優位性があると結論付けています。

 また「ワンターミナル」にもコンコースをフィンガータイプで張り出す形状だけではなく、サテライト式のコンコースを AGT(Automated Guideway Transit)で接続するような形状もあり、建築的な工夫だけでなく、将来的なモビリティやICTなどの技術革新も考慮して、利便性向上のための幅広い検討が必要であるとしています。Photo : NAA

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