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元エアバスのトップセールスマンがA380の過ちを語る【設計ミス・裏切り・混乱】

元エアバスのトップセールスマンであり同社の最高商務責任者であったJohn Leahy氏が、stern紙のインタビューに応じ、同氏が販売を担当したA380について語りました。

同氏は、キャリアで偉業となる15,000機以上を販売し、エアバスのアメリカ進出を成功させた人物として知られており、実際にA380の販売も担当した経験から同機には3つの過ちがあったことを語っています。

Photo : Airbus

◆まず第1の過ちは、機体の重量を重くしすぎたこと◆

A380の設計にはローンチカスタマーであるシンガポールの航空の意見が反映されており、同社がヒースロー空港の騒音基準を満たすことを求めたことから、設計した重量が重くなったとしています。また、A380-800の開発後には胴長型のA380-900のプログラムに移行することや貨物機を想定して設計したことも影響し、現存するA380-800型機としては適切な重量の航空機にならなかったとし、当初からA380-900を開発すべきで設計ミスを犯したとしています。

◆第2の過ちはエンジンメーカーによる誤情報◆

開発当時のエンジンメーカーとの打ち合わせでは、次の革新的なエンジンの登場は10年後になるとメーカー側は断言していたにも関わらず、3年後にはB787のGEnxエンジンとロールスロイスのトレント1000の開発を開始し、A380のエンジンに比べ燃費性能を10~12%向上させることに成功したことから、A380は著しく競争力を失ったとし、2年~3年待ち新型エンジンをA380に搭載していたら、すべてが変わっていたとしています。

また同氏はB787やB747-8型機の登場によって危機感を覚えたとし、新型エンジンを搭載できればA380は搭乗率が65~70%でも収益が得られる機材であり、双発機に対しても競争力のある航空機になったとしています。

◆そして第3の過ちは、ドイツとフランスの部署の間で混乱が多発◆

開発においてドイツとフランスの部署で多くの混乱が生じたことから製造コストが増加したほか開発遅延に至りエアライン側からの信頼が低下し、リリースは2008年の金融危機の影響を受けるタイミングとなってしまったとしています。

仮に当初計画の2005年にA380が就航していた場合、あるいは新世代のエンジンを搭載し2007年に就航していれば金融危機の影響を回避できて良いスタートをきれたが、実際はこれに燃料費の高騰問題も重なり、航空会社が資金繰りに苦悩する中でのA380のリリースは致命的なタイミングであったとしています。


Photo : Airbus

そして上記の問題を全て回避することでできていれば、 燃費性能においてA350よりも15%、B787よりも20%優れていたとし、経済的にもハブ空港への移行が促進され、現在のポイント・ツー・ポイントのフライトはより少ない数であっただろうとの見解を示しています。

またこれらの失敗を生かしてA350のプログラムは、最高の航空機プログラムになったとしており、A350の成功にはA380での反省点が生かされていることを明らかにして締め括っています。

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