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今年生産プログラムが完了したA380、なぜA360やA370を通り越してA380となったのか

 2021年は、エアバスが世界最大の旅客機となるA380型機の生産プログラムを終了した年となりました。

 この旅客機は、晩年オペレーター側からは不評の一途を辿った機種となりましたが、航空ファンからは、今もなおその大きさ故に人気を誇っています。そんなA380の生産プログラムが完了したことを機に、このA380の命名にまつわるエピソードを紹介したしたいと思います。

 A380型機は、エアバスが1994年に巨人機生産計画を明らかにし、その当時のプロジェクト名は『A3XX』としてスタートしました。そして2000年12月に正式に開発が決まり、その名称がA380と決定したことが発表されました。これまでエアバスは、A300、A310、A320、A330、A340など最新機種は順序良く命名していましたが、A380に関しては、壮大な計画であっただけに、これまでと違った名称とすることが検討されました。

 この機種名の決定の経緯は、これまで諸説あるものの、エアバスは、地元フランスの『La Dépêche du Midi』紙に以下のように明らかにしています。

 まず純粋にA350とすることは、技術的、サイズ的な飛躍を反映したものでなかったことから、当初から候補に挙がらなかったとし、A360は快適に地球360度を移動できることを連想させるということで、候補となったとしています。しかしながらエアバスの最新機種は、堂々巡りではないとの異論があったことから、最終的に却下となりました。

 当時命名を巡っては、大型受注を見込んで中国を意識していたことが明らかにされており、このようなことからA370の7は中国で不人気の数字の一つであるのと同時に、北京語で騙すという言葉に似ているほか、広東語では男性器の発音に似ていることから却下となりました。

 そしてA380の8は、『発』を連想させる数字として中国でラッキーナンバーされており、発展・富築く・大きくなるなどの意味があるほか、8という数字がこのプロジェクトを象徴する2階建を表しているように見えることもあり、有力候補となりました。

 そのほか、巨大機を象徴するためにA500とする案もあり、A380と天秤にかけられましたが、最終的には馴染みのあるA3XXシリーズで落ち着かせることで決着し、A380と名称が決定しました。

 このような経緯でA380として開発された巨人機は、1,000件以上の受注を見込んでいましたが、実際にはそれに程遠い251機で製造を終え、開発当初から大型受注を見込んでいた中国からは、中国南方航空から5機を受注しただけとなりました。

 残念ながら時代は、燃費性能の向上を求め、大型機の開発は避けられる傾向にあり、A321XLRのようにナローボディ機の航続距離を延ばすことが重要視されていますが、またいつか巨人機が必要となる時代がくることを筆者としては、楽しみにしています。Photo : Airbus

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